人の生命を奪うからではない。文化を破壊するからだ。
この世に生を受けたモノは全てがいずれは死ぬのである。早いか遅いかだけのことである。人の寿命はせいぜいが、もって100年だ。
だが、人間の「文化」は5000年以上も続いてきている。なぜ文化が続いているのか、私は、それは人間が「体験」を積み重ねてきたからだろうと思っている。
つまり「体験」は文化的な価値であったのだ。
その「体験」や「経験」と云う価値をコロナウィルスは破壊しようとしている。
いや、コロナウィルス禍が始まる前から、YouTubeやVR(バーチャルリアリティ)などで、「体験したつもり」が幅を利かせ始めてはいたが・・・。
今回のコロナウィルス禍で、その流れが加速された。
特に打撃が大きいのはエンターティンメント界であろう。
なにせ「人が集まってはイケナイ!」と云うのだ。これまではどうやって「人を集める」かに腐心してきたのに・・・。
演者にとっては、会場を満員にすることが目標であった。たとえ少ない収容人数しかない劇場ではあっても、満員の観客ならば「場」は盛り上がるのだが、空席だらけのスカスカでは大きな箱ほどヤル気が起きない。エンターティンメントの生命は「臨場感」なのだ。「場」を共有することが一体感に繋がるのである。
だからこその坂本ビル地階での小劇場の開業を目指していたのに・・・。
過去の感染症の歴史を見たら、終息したらまた元の状態に戻っているのだが、今回のコロナ禍はちょっとこれまでとは違う気がするのだ。
これまでは感染する場所が全世界同時ではなかった。それが今回は、ほぼ同時に世界中で発生した。これは恐らくトラウマになってしまうであろう。
人間の心理に与える影響は大きいと感じる。一旦植え付けられた恐怖心を拭い去るのは難しい。
コロナウィルス禍で亡くなる人間の数は恐らく世界中では40万人くらいにはなるであろう。しかし、文化面での損失はもっと計り知れない。