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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2009-06-11-Thursday 数字のマジック

麻生首相がまた思い付きで、

可笑しなことを言い出したようである。

10日に首相官邸で記者会見して、2020年までの温室効果ガス削減の中期目標を「2005年比15%減」とすると発表したのである。

これは、アメリカの目標の「05年比14%減」やヨーロッパ連合の「05年比13%減(相当)」を上回る数字だと胸を張って言っているのである。

麻生首相という人は官僚のロボットか単なるスピーカーだなぁと思われる。それほどこの数字の検討を首相自身がしたようにはみえないからだ。これは完全に数字のマジックなのである。麻生首相は官僚にバカにされているのではないか?

97年に京都で開催された「京都会議」で「京都議定書」というものが採択された。その時の基準年は1990年である。日本は「90年比8%減」という削減目標であった。同じ90年比ではドイツは40%減、イギリスが34%減、フランスが20%減を目標にしていたから、一見すると数字の上では日本の削減%が少ないように感じてしまうだろう。しかし、この時すでに省エネに取り組んでいた日本と、まだ取り組んでいなかったヨーロッパ各国とでは、そもそもスタート地点が異なるから削減比率だけで較べるのは日本に取って不利な条約なのだ。

このことは京都会議の時から言われていたことだが、開催ホスト国という遠慮(?)もあったのか、それとも外交能力が欠如していたのかは判らないが、この数字で決着したのである。しかし、アメリカはこの条約を批准しなかったから効果の程が疑われたものであった。

しかも、日本は1990〜2005年の間に排出量は逆に7.8%も増えてしまったのである。

だから、基準年を90年から05年に替えるのは手品ばりのトリックで、数字の上では8%削減から15%削減へと倍増させたように感じさせる偽りにすぎない。

私は、この温室効果ガス削減にはとてもウサン臭いものを感じている。その第一は排出権の売買である。発展途上国の排出権を購入することで、買った国は温室効果ガスを排出しても良いという権利を得るのだというのである。どうも、環境をバーチャルな金融ビジネスにしようとしているだけの様に感じるのだ。排出権というのは「権利を金を出して買うことで、排出していないとみなそう」ということなのであるから、その国の環境は改善されるどころか、悪化させてしまう制度ではないだろうか?

なんら実体が改善されないのに、お約束事でそうみなそうというのは偽善以外のなにものでもない。

欧米人の考え方と日本人の考え方との間に大きな隔たりを持ったまま、欧米主導で地球環境問題を単なるビジネスにするのは許されない!

地球というかけがえのないものを、金儲け主義で生物が住めない星にしてはいけない。

官僚に騙されて、こんな事で胸を張る首相に、国際的な交渉が出来るのだろうか?はなはだ疑問である。