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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2009-09-26-Saturday 読売新聞「風向計」

「モノ」に頼らない観光

読売新聞北海道版「風向計」9月25日(金)掲載記事

20世紀と21世紀の観光では、質の点で二つの大きな違いがあると思う。一つは団体旅行と個人旅行の違いである。団体旅行は、北海道でいうなら、大型の貸し切りバスで全道を短期間に忙しく廻って歩くタイプの旅行である。個人でツアーに参加しても、大型バスの移動なら、団体旅行の部類に相当する。この種の団体旅行は減少傾向にあると言える。

個人旅行は、公共交通機関やレンタカーなどを使って、個人もしくはグループで移動するタイプの旅行で、こちらは件数では増加傾向にあるが、増加と言っても、単位が小さいから相対数ではまだまだ少ない。

団体か個人かに付随することだが、「他人任せ」か「自分でする」かという違いもある。団体旅行には幹事やガイドがいて、スケジュールや宿泊先、食事などもすべて決められていて、参加する人はその指示に従うだけで良い。これに対し、個人旅行は、自分で決めて、自分でやらなければならない。だから個人旅行には情報源としてのインターネットが不可欠である。

二つめは、景勝地を見て歩く観光と体験をして歩く観光の違いである。景色は本来なら最低でも春夏秋冬4回は見ても良いはずなのだが、人間というものは1回行ったらそれで満足してしまうようで、なかなか景色だけではリピーターは獲得できない。やはり視覚だけの感動ではインパクトが少ないのであろう。そこで、人間の五感(視・聴・嗅・触・味)をフルに使って感動してもらう体験型観光への工夫が必要になってきた。だが、それでもまだ弱い。人間というものは他人が作った「モノ」を体験するだけでは飽きてしまうからで、それでは景勝地観光と大差がないことになってしまう。

人間は感情の動物であるから、「思い入れ」という五感に続く6番目の要素が重要になってくるのだと思う。何かをつくるのに一緒に参加したり、協力したりすることでその「思い入れ」が生まれるのではないだろうか。

何かをつくると言っても、私が言いたいのはいわゆるハード、「箱物」のことではない。単なる「モノ」は完成した瞬間から陳腐化が始まってしまう。常に創り続けて永遠に完了しないが確実にその場所に活きている「何か」を、地元の人と一緒に旅人も参加して創り出す。それは、特性によって場所ごとに異なるはずだ。ある場所ではそれがお祭りであったり、壁や道路に貼るタイルやレンガであったり、農園であったりしても良い。

自分が参加した証が残り、満足感、充実感が得られるハートのこもった「コト」を場所ごとに探し出すことがこれからの観光では重要なことになると思う。