最近、トランプゲームの「フリーセル」に凝っている。コンピュータにも内蔵されているからご存じの方も多いと思うので、遊び方は省くが、これは、「戦略」を学ぶ上でとても参考になるゲームだ。
カードが全部、配られた上で、まずは全体を眺めてゲームプランを練らなければならない。プランを練る前に思いつくままに闇雲(やみくも)に初めてしまうと、すぐに行き詰ってアッと言う間にゲームオーバーになる。途中、こまめにカードをあっちに動かしたり、こっちに動かしたりと、結構面倒な頭脳を使う作業が多い。しかし、最初のプランがしっかりしていれば、スムーズに攻略することができる。特に初動のカードの動かし方を間違えると、途中までは何とかやりくりができるのだが、最終的には行き詰ってしまう。単純なゲームだがそれだけに奥が深いのだ。
これは「まちづくり」にも通用するのではないかと考えている。
5年前に政府から「観光カリスマ」なるものに選任されて以来、全国各地の45/47都道府県を回って講演をしてきた。講演内容は「中心市街地活性化」だから、行く先々でシャッターの閉まった寂れた商店街を見せられてきたが、元気な商店街も数は少ないが見ている。
成功事例には、「共通認識」「戦略と戦術」「コンセプト」など、それぞれ言葉の違いはあるが、根本は同じだと感じた。つまり、「まず行動を起こす前に、目的を明確化し、共有すること。その上で戦略を立てて実行に移す」ということに尽きると思うのだ。
危機感が高じるあまり、すぐに行動に移したがるのが人間だろう。しかし、目的を共有しない組織は早晩、空中分解して失敗するのがパターンである。しっかり勉強していれば同じ失敗の轍(てつ)を踏むことはない。
某国の前首相などは、お坊ちゃまだから、おそらく自分がやりたいと口にしたことは、周りにいる人間がすべてお膳(ぜん)立てして、何とか実現してくれていたのだろう。それを自分が口にしたことは何でも実現するのだと錯覚してしまったのではないだろうか。とかく下働きや段取りなどの細かい作業をしたことがない人にはこの手のご仁が多いようだ。
商店街というのは、企業規模の大小はあるが、皆、一国一城の主(あるじ)である。それぞれの企業にはそれぞれのやり方や考え方がある。それらをまとめて全体的な活動をしようというのだから簡単なはずがない。だからこそ、事業の大義名分というものが重要になると考える次第である。