私なりに考えをまとめたので、まずは帯広警察署と帯広保健所に行って話を聞いてくることにした。
条例というのは地域によって違いがあるからまずは帯広の条例がどんなものかを調べようと思ったのである。
この辺りのことは拙著「北の屋台繁盛記(メタブレーン社刊)」に詳しいのでここでは軽めにしておく。
警察の方は公道ではなく民有地を使うという方法をとることで2回でクリアできたのだが、保健所の方は難しくて、民有地でも屋台はダメだと言われ、その後十数回も通うことになるのだ。
実はこの時点(11月中旬)で残された時間はあまりなかった。3月末日までに報告書を作成しなければならないからだ。「屋台でまちづくりを続けるためには、法律を完全にクリアした方法を見つけださなければ認められない」その肝心の方法がなかなかみつからないのだ。
何としても年内に方法だけでも発見しておかないと、先へ進めなくなってしまう。
毎日毎日、朝から晩まで、屋台を合法的に運営できる方法を考えに考えた。思いついたらすぐに保健所に飛んで行って説明をする。そのつど、ダメ出しをされてはスゴスゴと引き下がることを何度も何度も繰り返していたのである。
これまでにも全国各地で「屋台を使ったまちづくりプラン」が発案されて一時的には皆、盛り上がるのだが、やがては仙台のように法律の壁にぶつかってしまってとん挫してしまう例があることも判ってきた。
調べれば調べるほど、最初は屋台で盛り上がっていた仲間達は、「やっぱり無理なのかぁ〜」と段々諦めムードが漂い始めて、会議への出席者数も激減し出したのだ。
こうなると意地でも法律をクリアする方法を見つけてやろうと奮い立った。
ここで私の趣味のマジックが活きたのである。
マジックのタネを考案する際には、あらゆる角度から方法を検討するのが常である。お客さん側から見ると現象面では同じ様に見えることでも、演技者側からすればその方法は何十、何百種類もあるのだ。だから、マジシャンにとって方法を一つや二つ否定されたくらいではビクともするものではない。
しかし、さすがに自信満々で保健所に持っていったプランが否定された時には少々メゲてしまった。前回の視察で見てきた呉の屋台と自動車の屋台をドッキングさせるアイデアであったが、これもあっさりと否定されて、いよいよアイデアに詰まってしまったのだった。
このアイデアが否定され、屋台(TKLと兼用)の事務所に戻って説明した時には、仲間の連中も「もはやこれまでか〜」と諦めたのだった。
詰まった時には原点に帰るのも方法の一つである。このままでは諦めきれない私は、徹底的に福岡の屋台を調べようと一人だけでもう一度福岡に飛んだのである。
たった1カ月前(10月21〜25日)に17名で視察した時には気が付かなかったことが、二度目に行った時には見えてきたのだ。問題意識の差とでも言おうか。気楽な物見遊山的視察では見えていなかった部分が明確に見えてきたのである。
最初に行った時には、屋台の本体はリヤカー部分だと思い込んでいた。しかし、保健所に通う内に、法律上(食品衛生法上)は「屋台には屋根と(三方を囲う)壁」が絶対に必要なのだということが判ったのだ。つまり、リヤカーは屋台の本体である屋根と壁を営業場所まで運ぶためのもので、それを利用して合理的に客席や調理場を作っているのだということ等が判ったのだ・・・。
思い込みが思考の邪魔をしていたのだ。福岡の屋台の組合長さんや駐車場のオーナーにもインタヴューをして、やはり、あらゆる角度から見なければならないのだなぁということを痛感したのだった。
そして、福岡の屋台店主たちにも変な思い込みがあることも判った(これ以上書くと私の講演を聞く必要がなくなってしまうので詳しく書くのはこの辺でやめておこう)。
とにかく、二度目の福岡視察で、新しい発見や発想が実に多く生まれた。机の前でアイデアに詰まった時には現場に出向くのも良い解決法だ。
その新しいアイデアを絵と模型にして保健所に持って行ったら・・・。(つづく)