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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2010-11-26-Friday 読売新聞風向計

2010年11月26日読売新聞北海道版「風向計」掲載

まちづくりの種 足元に

先日、帯広から札幌に向かう列車に一人で乗っていたら、新得駅から乗車して私の横の席に座った女性が、新得町でファームイン(農業体験などができる民宿)をされている湯浅優子さんだった。なんという偶然だろう。札幌までの車中ずっと話し続けたのは言うまでもない。

2004年1月、グリーンツーリズムの研究のために農村民泊の先進地として有名な大分県安心院(あじむ)町を訪れた時のことだ。宿泊先の民宿・中山家で「農村民泊を勉強したくて北海道の十勝から来ました」と言ったら、「エ〜ッ、私たちは十勝の新得町の湯浅さんや鹿追町の中野(健治)さんたちに指導を請いに十勝に行ったのですよ。十勝こそ私たちのお手本なのですよ」と言われて驚いた。

大分つながりの話題をもう一つ、1987年8月、帯広青年会議所が当時の平松守彦大分県知事、横路孝弘北海道知事、堤清二西武セゾングループ代表の3人を講師に、小浜維人NHK解説委員をコーディネーターに当地でシンポジウムを開催したときの話である。

青年会議所の新入会員だった私は、平松知事を送迎する車の運転手役であった。横路知事が提唱していた「一村一品運動」のお手本が大分県であったから招かれたという話を聞いた平松知事は、「一村一品運動のお手本は十勝の池田町の十勝ワイン。わざわざ私を呼ばなくても・・・」と漏らした。そんな話題を持ち出しながら、湯浅さんに「身近なことは意外に関心が低いものですね。遠くにあるものの方がすごいと感じやすいのかなぁ」と話を振った。

よく、まちづくりに必要なのは「若者・馬鹿者・余所者(よそもの)」の3種類の人間だと言われる。地元の良さを、地元の人間は毎日見ているだけに、当たり前になっていて実感しづらい。そこを余所者の新鮮な眼で、「ここはとても素晴らしい場所だ」と地元の人に伝えることが必要だし、また地元の人も、他所をたくさん見て歩くことも必要だ。ただ多く見れば良いというものでもない。漠然と見るのではなく関心を持ちながら観ることだ。

帯広駅近くの駐車場に「北の屋台」を始める前、世界中の屋台を視察した時もそうだった。屋台に関心が無い時には屋台なんてまったく眼に入らなかった。眼で見ただけで頭では観ていなかったのだろう。屋台に関心を持って観たら、世界中の至る所に屋台があり、それを観ることでとても役に立った。

「無いモノねだり」のまちづくりは終わった。これからは「在るモノ探し」のまちづくりだ。まずは身近にあるモノを、自らの関心を高めて、新鮮な眼で観ることが重要だと思うということで二人の意見が一致したのだった。