『行動力生んだ「大予言」』
危機感が原動力となって行動力が発揮される場合がある。
私の場合、それは「ノストラダムス」だった。1973年11月に出版された「ノストラダムスの大予言」(五島勉著、祥伝社刊)は、200万部も売れた大ベストセラー。1999年7月に人類滅亡の危機が訪れるという内容だった。
高校1年生だった私は、「26年後のことなんて遠い未来の話」と、当時は実感が湧かなかった。
しかし、99年が迫ってきた95年、1月に阪神淡路大震災が発生し、3月にはオウム真理教の地下鉄サリン事件が起きた。「これは本当に予言が当たって地球規模の災厄が起こるかもしれない」と危機感を抱いたことは、今も記憶に新しい。
この後、ノストラダムスに関する本が再び大流行し、日本は世を挙げて終末論が喧伝(けんでん)された。結局、ノストラダムスの大予言は「ノストラダマス」で終わったようだ。
ここで予言がどうこう言うつもりはない。きっかけが何であれ、危機感を持つことが重要だと強調したいのだ。
危機感を抱いた私は何をしたか。96年に地球環境問題を考える組織「十勝環境ラボラトリー(TKL)」を立ち上げた。
TKLの目的は『十勝から新しい価値観とライフスタイルを創造し、世界に向けて発信することで地球環境問題に貢献する』『十勝を安全で安心なエネルギーと食料の「環境循環モデル地域」にする』の2つ。目的達成のために9プロジェクトを同時進行させ、帯広の新たな名所となった「北の屋台」もこのプロジェクトから派生して生まれた。
振り返ると、TKLは時代の最先端を進み過ぎていたかもしれない。目的が必ずしもストレートに受け入れてもらえず、2006年末に解散した。
でも、長期の将来展望を持った上での短期計画を持っていたから、成果を挙げることができたのだろう。
危機感と行動力があれば首尾良く進むかというと、決してそれだけではない。戦略性も重要な要素だからだ。
経験からして「まちづくり」においてはメンバーの共通認識が大切となる。危機感のあまり、一部の幹部が焦って共通認識を持つ前に拙速に行動してしまうと、どこかの国の政府のように途中で空中分解してしまう。まちづくりが失敗に終わったケースはほとんどが「拙速な行動」に原因を見いだせる。
目的を明確にして、実現に向けての戦略性を持ち、メンバーの意識をまとめて実際に実行する。今こそ、そうした能力がリーダーには求められている。