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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2012-05-22-Tuesday 勝毎「論壇」

2012年5月21日掲載、十勝毎日新聞「論壇」欄

「まちづくりとひとづくり」

「北の屋台」を作った功績によって、私は2005年3月に国土交通省から「観光カリスマ百選」なるものに選出された。「観光カリスマ」とは日本全国の観光、まちづくり、地域再生などに実績のある個人100人を認定して後進の指導をさせようというもので欠員の補充はない。

評価された理由は宿泊客を増やしたことにあると考えている。近年の観光の課題は、いかに街に宿泊させるかなのである。昼中心の通過型は派手に見えるが、地元に落とすお金は滞在型よりはるかに少ないからだ。

観光カリスマに認定されたことで、日本全国47都道府県中45に赴き、講演活動などを行ってきたから、全国の中心街の問題点を肌で感じる。いずれも空き家、空き地が増えて商店街としての体を成していないというものだ。原因は幾つかある。経営者の高齢化、後継者不足という店単独の問題点もあるし、車社会で客が郊外の店に買い物に行き中心街に来なくなったという、いわゆる「スプロール化」という社会問題や時代の流れなども複雑に絡み合っている。

解決策を見つけようとして、全国各地の商店街は悪戦苦闘をしているが、しかし、まだ「これだ!」と言える解決策は見いだせていないのが現状だ。いずれも「根本原因を探って正すことをせずに、客が来ないという表層の事象だけを解決しよう」としているからだろう。手っ取り早く客集めのためのイベントを実行するところがほとんどだ。

商店街の衰退を人間の病気に例えればがんに似ているかもしれない。イベントは単なるビタミン剤に過ぎず、根本治療にはならないから、がんは進行し、体力が落ちて手遅れ状態になりやがて命を落としてしまうことになる。補助金は痛み止めのモルヒネに似て、常用すると中毒になる危険性が伴う。

根本問題というのは、場所ごとに異なるから、解決するには街の歴史や将来像などの特性をしっかりと把握しておく必要があると思う。

帯広の中心街の根本問題は「少子高齢化」「積雪寒冷地」「公共交通機関」「道路」にあると考えている。特に「広過ぎる道路」と「冬」の問題を解決せずして、いたずらにイベントを実施しても効果は薄いと思う。ましてや手段であるはずのイベントが目的化してしまっては本末転倒になる。道路は物理的に狭く出来なくても視覚的に狭く見せる方法だってあるはずで、知恵を使えば法律だってクリアできるのだ。

「まちづくり」に必要なのは知恵を使える「ひとづくり」でもある。