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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2014-04-10-Thursday 小さいおうち

映画「小さいおうち」を観に行った。

例によって「夫婦50歳割引き制度」のおかげで4月1日からの消費増税でも2人で2200円で観られるのはありがたいことだ。

テレビのドラマがつまらないし、なかなか毎週連続で見ることも出来ないから暇をみつけては映画舘に行くのである。

公開時にすぐに観たかった映画であったが、帯広での上映は今月に入ってからである。毎度感じることだが帯広の映画館での上映作品のチョイスは私の嗜好とはかなり異なる。

もうテレビでもこの映画の宣伝をしていないから、世の中のスピードからも大きくズレを感じる。全国の公開時に合わせて上映して欲しかったなぁ。女中タキの若い頃を演じた黒木華が第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞したからどんな演技をするのかが観たかったので20:30からの最終上映を観に行った。

黒木華は「銀の匙」でお嬢様の役を演じていたが、彼女の顔はお嬢様というよりも女中役に向いている。今回の女中役の方が正にピッタリとハマっていると感じた。

この「小さいおうち」の原作は直木賞を受賞した中島京子の作品である。映画の監督は山田洋次。映画と原作ではかなり内容が違っているが、まぁ、それはどの作品にも言えることだから仕方がないだろうと思うが、いささか設定の説明不足を感じた。

映画のストーリーの詳しい内容はまだ観ていない人の為に、タネ明かしをしないようにとの配慮からいつもなら書かないのだが、今回は公開からかなり遅れての上映であるから構わないであろう。

映画の冒頭で倍賞千恵子演じる老年のタキは既に死亡しているが、山形から女中奉公に出たタキが勤め先の家で体験したことを綴った回想録を軸に話が展開していく。

小説では、松たか子演じる時子は、黒木華演じるタキが山形から14歳で小中家に女中奉公に入ったときは22歳であったから8歳年上という設定である。お姉さんのようにタキの訛りを直してあげたり、お古の着物を与えたりしてタキの憧れの対象になっているのだが・・・。

時子が浅野家に嫁いだ時にタキも一緒に浅野家に仕え、時子は恭一を産むが、浅野家の主人が事故死したので、タキは時子と恭一とともに彼女の実家の小中家に戻る。

やがて時子は10歳年上の平井雅樹と再婚し、タキは再婚先の平井家に仕えることとなった。

この辺りが映画ではほとんど説明がされていないし、違って表現されていたように感じる。映画では、小中家に女中として奉公し、時子が結婚して新たに家を新築(これが小さいおうち)した時に、小中家から平井家に移ったように描かれていた。恭一も雅樹の実子であるかのような表現ではなかったか。

小説では、時子は同性から見ても非常に魅力的な女性として描かれているが、映画ではその辺があいまいである。

時子は夫の玩具会社の若手デザイナー板倉正治(吉岡秀隆)と不倫関係になっていくのだが、直接的な性描写がないところが実に良い。

山田洋次映画には「フーテンの寅さん」からの縁なのであろう倍賞千恵子や吉岡秀隆らが必ずと言って良いほど出てくるなぁ。

小説ではタキは雅樹と時子との間に性的関係がなかったのではないかと推測していたが、映画ではその辺りの表現もない。ただ夫の雅樹役の片岡孝太郎は「終戦のエンペラー」では昭和天皇を演じていたが、妻には嫉妬心を抱かないキャラクターとして演じていたように思う。

時子の夫(会社)からの見合い話を勧めるために板倉の下宿を時子が訪ねる場面で、時子の帯の柄が出掛ける前と戻った後で逆になっていることをタキが見て、帯が一旦解かれた後に結び直されていることに気付いてしまう場面は直接的性描写よりも客の想像力を喚起している表現であるところが昔の日本映画的でとても好感が持てた。

やがて日米開戦、徴兵検査で丙種だった板倉にも召集令状が届く。板倉のもとに行こうとする時子をタキは止め、代わりに板倉を平井邸に呼ぶよう手紙を書かせ、それを預かった。

ここも原作と映画が異なる場面であるが、原作ではタキは回想録に、板倉が訪問して来て、彼が家にいる間、屋外で作業をしていたと記すが、映画では、回想録に板倉は来なかったと記していた。

この後はこの「手紙」を軸に話が展開していくとだけ書いて、ここから先の解説は野暮になるから止めておこうと思う。

この映画はイマジネーションが豊かな人が観て楽しむ作品である。