午前中に雑用を済ませて、午後からミュージアムに向かう。
2件の予約は、15:00〜と16:30〜で、間には若干の時間差があるが、自宅に戻るほどの差でもない。
並べ替えをやったり、マジックの練習をしたりと、結構、有意義な時間でもあるのだ。
マジックは観客に見せる回数によって、かなり腕が上がるものである。ちょっと練習した程度ですぐに出来る様になる器用な人でも、観客に見せることをしなければ上達しない。
自分だけで鏡を相手に練習をすれば技は上達するかもしれないが、客あしらいは上達しない。
マジックは、技だけではダメなのだ。人間の先入観や錯覚なども活用する総合的な芸能である。いや、むしろ、技よりも人間相手の芸能であるからこそ、あらゆるタイプの観客に見せて、異なる反応を体験することで、客あしらいを身に付け、度胸も付けていくことが必要なのだ。
マジックの技量はたとえ下手くそであっても、堂々と演じれば上手く見えるものでもある。
観客を飲んでしまえるか、どうかが、上手い下手の分かれ目と云っても過言ではないのだ。
練習の時には素晴らしく上手いのに、観客の前ではあがってしまって、練習の成果を出せないマジシャンも多いのだ。実は私もかつてはそうであった。
年齢を重ねることで、ズーズ—しくなってきたのか、多少のミスでも口と態度で誤魔化せるようになってきたのだ。こうなってくると、多少ミスをしても、逆に観客の方が、私がワザと演技でやっていると思ってくれるようにもなるのだから不思議なものだ。
要は、マジックは心理的な駆け引きなのである。
マジック・ミュージアムのオープン以来、観客には私の実演を見せる様にしている。ただ展示してあるものを見るだけより、その方が観客が喜ぶからだが、私も段々と昔の勘が戻って来て、指も動きが滑らかになってきた。
マジック・ミュージアムは、他の博物館のコレクションを見せるだけとは違って、マジックの実演も見せられるから、私にとっては一石二鳥なのである。毎日が楽しいなぁ〜。