ミッシェル・ベルトラン作の「美人手品師」と言う名称のマジックを演じる西洋からくり人形である。
西洋のモノが入手出来たから、次は日本のからくり人形の手品師が揃えば、洋の東西のマジシャンのからくり人形が展示出来ることになる。
私の蒐集熱に火が付いた。
日本のからくり人形の歴史は、徳川家康が機械式時計を南蛮人からもらったことに始まると言われている。
研究熱心な日本人は、西洋の機械式時計の仕組みを勉強して、更に工夫を加えていった。
からくり人形は、この時計職人が作ったことから始まっているが、洋の東西の自動人形が共に時計職人から発生していることは面白い共通点である。
日本のからくり人形は、独自の進化を遂げ、やがて西洋のオートマタに逆輸入されるまでに発展していった。
いくつかのオートマタは日本発祥のものが逆にヨーロッパに伝わり、ヨーロッパでも同様のモノが作られたと言われている。
日本のからくり人形には「品玉人形」と言う名称の、手品師が箱を持ち上げる度に中の品物が入れ替わるというからくり人形があるが、この原理もヨーロッパに伝わり、オートマタの「マジシャン」になっていったのである。
何とか、この「品玉人形」を入手したいと探していたのだったが、江戸時代に製作された現物はモノ自体が売られることがほとんどないし、もしも売られることがあったとしても超高額で手が出ないであろう。
ネットで検索してもなかなかみつからなかったのだが・・・。
それが、先週、偶然に見つけたのである。
愛知県の、さるお寺の住職さんが、趣味で「品玉人形」を復元制作したというのである。
この住職さんは、元は精密機械の会社で働いていて、時計の修理やからくり人形の制作をやっているというのである。
すぐに連絡先を調べてコンタクトを取ったのであった。
この住職さんの中村潤翁さんは、江戸時代の寛政8年(1796年)に出版された「機巧図彙(からくりずい)著者:細川半蔵頼直(土佐)」という本に載っている「品玉人形」の設計図を基にして、解読しながら2008〜2009年の1年間をかけて制作をしたという。
その「平成品玉人形」を「マジック・ミュージアムに展示してくれるなら」と譲ってあげると言ってくれたのである。嬉しくて飛び上がらんばかりであった。
やはり、「日本唯一のマジック・ミュージアム」と言う謳い文句は絶大な影響力を持っているようだ。
そのからくり人形「品玉人形」が今日20日に到着した。気温差があるから慎重に開封し、組み立てて動作の確認を行った。
歯車も木製であるから、カタカタと歯車が噛み合う音が柔らかい。小さな和服姿の男の子が星座して箱を両手で持っており、その箱が上下する度に中身が4種類入れ替わる手品をするからくり人形である。
隣には妖艶な西洋の美人マジシャン、なんともこの対比が面白い。
これでまた、マジック・ミュージアムに素晴らしい目玉の展示物が増えた。