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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2018-08-08-Wednesday 旅藝人始末書

寄席や芝居などの書籍15冊が届いた。

その中に、とても興味深い1冊が入っていた。「異國遍路 旅藝人始末書(宮岡謙二著)修道社刊 昭和34年9月20日再版」と云う本である。

まだ、サラッとしか目を通していないのだが、第1章の「旅芸人の先駆者たち」と云う章には慶應2(1866)に西洋に興行に行った手品師のことが書かれている。

日本人で初めてパスポートを取得したのは手品師の隅田川浪五郎であると云うのは、以前から知っていたが、具体的な記述を目にするのは初めてである。同行した柳川蝶十郎朝吉の「バタフライ・トリック(和妻で、胡蝶の舞とも浮かれの蝶とも云う)」などの描写もあり、後に柳川一蝶斎を継いだ後のことにも言及している。

第2章「慶応三年のパリ万博」、第3章「柳橋芸者の仏京行状記」、第4章「明治はじめの足跡」、第5章「太神楽海を渡る」、第8章「英京に巣喰う芸人群像」にも海外興行をした手品師の記述がある。

第3章、第4章では、明治になってからの初年頃の記述として帰天斉正一のことに触れている。

第5章では、明治11(1878)年頃のこととして、服部松旭(後の松旭斎天一)の最初の海外興行のことや、第8章では天一と名乗ってからの海外興行、弟子の天勝の海外興行などの記述もある。

マジック関係の専門書籍ではないものに、これだけ昔の手品師のことが書かれているのは珍しいことだ。

マジックの歴史の資料としてもたいへん貴重なモノである。

著者の宮岡謙二氏は明治31(1898)年の生まれとあり、慶應義塾大学政治科を卒業後、大阪商船に入社して、長く海外に勤務したとある。良く調べたものだ。

本の状態はとても綺麗で、カバーもあるし、折れ目や書き込みもまったく無い、読まれた形跡が見えないし、本の中には出版社である「修道社」の刊行案内の栞も入っていたことから、デッドストックだった可能性がある。なかなかに面白い本を入手したものだ。

ジックリ読んでみることにする。