「不吉なことを口にしてはいけない、現実になるから・・・」と云う言霊信仰がある。言葉というものに霊力があると信じられているのだ。
だから、たとえそれが真実であっても口にするのは、現実化させてしまうから、言ってはいけない事とされている。
不吉な言葉を発してはいけない信仰なのである。
このことは、災害においても同様なのだ。
家を建てると云う行為は、生涯に一度の大事業であろう。その建てたばかりの家の前で「ここは浸水し易い場所なんだよ・・・」とか「がけ崩れが起き易い場所なんだよ・・・」なんて不吉な言葉は、たとえそれが事実であっても発してはいけないタブーだったのである。もしも、それが現実化したら「お前が不吉なことを口にしたから現実になったじゃないか!」と日本人は平気な顔して非難するのである。
このことが災害対策を遅らせているひとつの原因かもしれないと感じる。
家を建てる、若しくは家を買う時に、生涯に一度の大きな買い物なのに、地盤などを良く調査もせずに購入するのは何故なんだろう?
駅に近いとか、スーパーマーケットに近いとか、学校に近いとか、そういう条件の方を優先して決めているのではなかろうか?
地球温暖化に依って、今後の気象条件は厳しさを増すであろう。真剣に自分の住む街の状況や自分の家の状況を調べる必要があるだろう。なにせ自分の生命が掛かっているのだから・・・。
北海道の河川は「雨対策が本州の河川に比較して脆弱である」と言われている。
先日も、札幌の豊平川が氾濫したらどうなるのかをCGを使って見せる番組があったが・・・。豊平川が氾濫したら、アッという間に市街地に水が押し寄せる。大通公園は50㎝もの浸水を受けると云う。そこには、広い地下街があり、地下鉄がある。そこに水が入ってきたら・・・。
暖冬化に依って、最近は北海道でも真冬に雨が降るケースが生じて来た。6〜7mも雪が積もる札幌市は、市内の除雪した雪を河川に排雪している。そこにもしも時ならぬ大雨が降ったら・・・。
梅雨が無かったはずの北海道にも最近は6月頃に長雨が降り「蝦夷梅雨」とも言われている。6月といえばまだ雪解け水が河川を流れている季節だ。そこに長雨が降ったら・・・。更に、季節外れの台風でも襲来したら・・・。
タワーマンションや高層ビルも災害に弱いことが露呈した。地下に機械室があるビルは、軒並み停電するであろう。
停電したら、エレベータはもちろんのこと、揚水ポンプが稼働しなければ生活水も使えない。
今回の武蔵小杉のタワーマンションでは、水洗トイレが使えなくなった。1階の共用トイレしか使用出来ないと云う。お風呂に張った水をトイレのタンクに入れて流したら良いのでは?と思ったら、断水したら、高層階で水洗トイレの水を流したら、パイプ中の空気に圧力が掛かってパイプが下層階で破裂してしまう危険性があるから、使用差し止めにしているのだと云う。
想像してみた。
もしも、私が47階の最上階に住んでいて、オシッコがしたくなったら、階段を47階分徒歩で降りて用を足さねばならない。おそらく途中で漏らしてしまうだろう。上手く1階までもったとしても、今度はまた47階まで徒歩で上がらなければならない。一日に何度オシッコがしたくなるのであろうか?
帯広では、今、中心街でタワーマンションを建設中である。帯広市内もハザードマップを見たら十勝川、札内川、帯広川が氾濫したら、我が社の前の通りも50㎝くらいの浸水があるとなっている。
このマンションの機械室は、果たして何処に設置されているのだろうか?
「タワーマンションの限界」という新書があるという。
もはや日本で安全に暮らすには、浸水の心配の無い高台の地盤の良い3階建ての鉄筋コンクリート造りのマンションにでも住むしかないのじゃなかろうか?