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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2021-04-04-Sunday マジシャンが登場する本

暇だ〜!

とにかく暇で暇で、他にすることが無いから、本ばかり読んでいる。

最近読んだ本の中で「マジシャン」が登場し活躍する面白い作品2点を(ネタバレにならない範囲で)紹介したい。

1冊目は昨年11月30日発売された東野圭吾の「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」(光文社刊 1980円)である。

題名の通りに、名もないような寂れた町で殺人事件が起こる。被害者の弟がひと癖あるアメリカ帰りのマジシャンで、被害者の娘と叔父のこのマジシャンが事件を解決する話だ。去年11月末の発売なのに、もうコロナ禍の描写があるのは驚きである。東野圭吾のガリレオシリーズの湯川学みたいなキャラクターが新しく生まれる可能性を感じた。

以下の『 』内はネットに紹介されているあらすじである。

『名もなき町。 ほとんどの人が訪れたこともなく、 訪れようともしない町。 けれど、 この町は寂れてはいても観光地で、 ふたたび客を呼ぶための華々しい計画が進行中だった。 しかし、 多くの住民の期待を集めていた計画は、 世界中を襲ったコロナウイルスの蔓延により頓挫。 町は望みを絶たれてしまう。 そんなタイミングで殺人事件が発生。 犯人はもちろん、 犯行の流れも謎だらけ。 当然だが、 警察は被害者遺族にも関係者にも捜査過程を教えてくれない。 いったい、 何が起こったのか。 「俺は自分の手で、 警察より先に真相を突き止めたいと思っている」──。 颯爽とあらわれた“黒い魔術師”が人を喰ったような知恵と仕掛けを駆使して、 犯人と警察に挑む!』

2冊目は今年2月26日に発売された、釧路出身の作家 桜木紫乃の「俺と師匠とブルーボーイとストリッパー」(KADOKAWA刊 1760円)である。

この小説は「小説野生時代」に2020年1月号から連載スタートしたものが単行本化されたものだ。

昭和50年代の釧路のキャバレーが小説の舞台である。

私がちょうど大学生時代(昭和51〜55年)に私のマジックの師匠であった故ジミー忍師の助手としてキャバレーにも何度か出演したことがあった。卒業後には昔馴染みのマジシャンらが帯広のキャバレーに出演する際には観に行ったりもした。キャバレーの社長も支配人も親しい知人だったので、席に付かずに酒を飲まないならば、無料でフロアの端っこで立見でショーを見せてもらったことも何度かあった。

終演後には楽屋を訪ねて、宿舎(キャバレーが招聘する芸人用に契約しているアパートの1部屋でキャバレーからは徒歩15分くらい離れていた)まで荷物運びを手伝ってから一緒に食事をしに行ったりしたものだ。

芸人をホテルや旅館に泊めるよりも、アパートで自炊させた方が経費削減になるからなのだろうなぁ〜。

この時期には、専属のバンドが居てダンスをしたり、ショーを見せたりする様ないわゆる正統派キャバレーはかなり下火になっていて、ピンクキャバレーが増えていった時代でもある。

昔一緒に東京で活動していたマジシャンが帯広のキャバレーに出演した時のことだ。季節は真冬であった。終演後に宿舎(アパート)に一緒に行っても、他には当然誰も待って居るはずもなく、自分で石油ストーブに火を点けなくてはならない。だからとにかくとても寒かったことを憶えている。この時にマジシャンから「貴方はプロマジシャンにならなくて正解だったよ!」と言われたことを思い出して、懐かしくとても切ない気持ちになって読んだのである。若かりし頃の哀愁である。

釧路と帯広は隣町ではあるが、釧路のキャバレーには行ったことがなかった。でも、この小説のモデルはおそらく「キャバレー銀の目」ではないだろうか?

港町と内陸の町との違いはあっても、なんとなく当時のキャバレーの雰囲気や情景が頭の中に浮かび上がってきてとても感慨深いものがあった。

題名にある「師匠」とは、主人公からそう呼ばれていたマジシャンのことで、なかなか魅力的な謎のある人物として描かれている。

桜木紫乃も東野圭吾も、今、乗りに乗っている作家であるから、グイグイと小説に引き込まれる勢いがあって両方とも面白い本だ。お勧めの本である。

以下の『 』内はネットのあらすじ紹介。

『「血のつながり」はなくても、そこには家族があった。切ない事情を持ち寄って、不器用な四人が始めた同居生活。

ギャンブルに溺れる父と働きづめの母から離れ、日々をなんとなく生きる二十歳の章介。北国のキャバレーで働きながら一人暮らしをする彼は、新しいショーの出演者と同居することになった。「世界的有名マジシャン」「シャンソン界の大御所」「今世紀最大級の踊り子」……店に現れたのは、売り文句とは程遠いどん底タレント三人。だが、彼らと言い合いをしながらも笑いに満ちた一か月が、章介の生き方を変えていく。『ホテルローヤル』『家族じまい』著者が放つ圧巻の人間ドラマ! このラストシーンは、きっとあなたの希望になる。』