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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2022-02-06-Sunday うなされる!

悪夢ににウナサレテ目が覚める!

学生時代のマジック大失敗の夢である!

寝汗で寝巻がビチャビチャになるほどの忘れたい悪夢なのであるが・・・

あれは大学3年生の20歳の時のことだから、かれこれもう44年も前のことなのに・・・

未だにウナサレルのは何故なんだろう。まだ心のどこかに悔いや未練が残っているのだろうか?

現在も鮮明な映像が夢の中で毎度毎度繰り返されるのだ。

そのシーンとは、1978(昭和53)年の大学3年生時に、渋谷児童会館ホールで開催した「駒澤大学手品奇術研究会(KMC)」の年一度の発表会の場面である。

当時私は、3年生で幹事長(他のクラブの会長職と同じであるが、我がクラブでは何故だか幹事長と云う名称であった)で、発表会の企画・構成・演出を担当していた。

1年前の2年生の頃から、ず〜っと自分の代の発表会の企画を温めてきた。私の当時の未来予想図では、この発表会でマジック界の評判を取って、卒業後にプロマジシャンになる為の足掛かりにしようと目論んでいたのである。

構想は練りに練ってきたし、準備も怠りなく進めてきた。KMCのメンバーもよく練習してくれたし、各演技者や全体のBGMや効果音もピッタリなものが天から降って来た様に見つかり、本番直前までは自信満々の出来栄えであったのだ。

当日は、他大学のマジッククラブの人達も大勢が観に来てくれたし、プロマジシャンも数人が観に来てくれた。更に某テレビ局のプロデューサーも前評判を聞いて見に来てくれたのであった。

私が組み立てた構想は、オープニングと1〜3部の4部立てであった。

まずはオープニングでは巨大なトランプの幕が舞台に出現して観客の度肝を抜き、第一部は「ストーリー性のあるマジック」、第二部は「お化け(モンスター)にマジックを演じさせる趣向」、第三部は「通常のマジック」と云う、当時の学生のマジックとしては画期的な凝った演出であった。

私は、第三部の大トリでマジックの華である「鳩出し」の演技を行う予定であった。得意の「ステッキ」の演技(長い棒状のステッキが出現・消失・変色したりするマジック)と「鳩出し」を組み合わせたオリジナルマジックである。

マジックの師匠であるプロマジシャンのジミー忍師(1943.06.26〜1995.05.11)の指導も受けて、当日のリハーサルまでは完璧な演技で心の余裕まであったのだ。

発表会の本番では、オープニングのカードマジックを演じたI君のスイッチの上下を逆向きに付けるというミスで、ミリオンカード(手の中からトランプが出てくるマジック)でトランプを箱に捨てた途端にトランプが噴水の様に空中に飛び出るスイッチが入ってしまった(本来は演技の最後に箱の中に手を入れてスイッチを下から上にして入れるのに、上下を逆に付けたから箱に捨てたトランプの重みでスイッチが入ってしまった)チョンボがあったが、第一部の「物語性のあるマジック」はまずまずの出来であったし、第二部の「お化けが演じるマジック」は素晴らしい出来であった。特に「雪女」の演技は大評判であった。ステージ脇で見ていた私も涙が出てくるほどの感動作であった。

第三部も、私の前までの3年生3人の演技は良い出来であった。残すはトリの私の演技だけである。

「鳩出し」と云うマジックは、鳩という生き物を扱うマジックである。生き物だけに、狭い箇所に数時間も閉じ込めておくと呼吸困難になって死んでしまうから、セッティングは本番直前に行う必要がある。

それでも、この日は時間的に余裕を持ってセッティングの時間を早めに設定しておいた。万が一のことを考えてのことである。それだけ私は慎重な性格なのである。ところが・・・。

次年度の幹事長で、翌年の発表会で「鳩出し」を演じる予定であるI君に、私のやることを見せておいて勉強させておくことにしたのである。

鳩のセッティングも手伝わせて指導していた。前日の夜には、ジミー師の自宅にも連れて行って私の演技を見学させたのである。

ジミー師からの最終チェックでは、「演技はよろしい!ただ鳩の羽に糞が付いていて汚いから、今晩、羽をキレイに洗っておくように・・・」との指示があった。それを聞いていたI君は・・・

本番直前の鳩のセッティングをしている時に、なんと鳩の羽をチョキチョキとハサミで切り出したのである。

すぐにハサミの音に気が付いた私が「馬鹿野郎!なんてことをするんだ!」とI君を怒鳴りつけたのだが時既に遅しであった。

彼が羽を切った鳩が、出現させてから助手にただ手渡すだけの鳩だったならばまったく問題が無かったのだが、よりにもよって演技中に私が出現させた後に、私がピッと格好よく空中に手放した鳩が3mほど離れた助手の差し出す棒にピタリと止まる様に調教を施してあった一番重要で代替不能な鳩の羽を切ったのであった。

羽を切ったことで、もしも鳩が上手く飛べなくなってしまったら、私の演技の流れが続かなくなってしまう。仕方なく、彼が羽を切った影響の有無の確認をしなければならなくなってしまったのである。

本番直前と云うのは、平常心でいなければならないから、なるべく普段通りの行動をとるというのが、昨今のアスリートの世界でも常識になっている「ルーティン」だというのに・・・。

それを、本番直前になって、いきなり鳩の羽を切り出すなんて・・・

それも演技者である私に一言の相談も無しにだ・・・

いったいなんてことをやらかしてくれるのだ!

調教通りに飛ぶかの確認作業の為にセッティングに数分の遅れが生じてしまった。

舞台隅では、私の代わりに2年生が舞台監督を務めている。その舞台監督代理が、私がまだステージに立ってもいないのに幕を上げてしまったのであった・・・。

第三部での演技を終えた3年生がすぐに幕を降ろさせた。

私の助手を務めているのは1年生の女性二人である。彼女らの経験はまだ浅いというよりも初めて立つ舞台なのである。

普段は冷静な私であるがこの時ばかりは少々慌てた!

セッティングを終えた私が足早に舞台に板付き(幕の後ろに立った状態)になったのだが、舞台中央に出る時に、球状に丸めてズボンのポケットに入れてあるスカーフを舞台袖に落としてしまったことに気が付かなかったのである。いつもなら舞台上で最終確認をしてから幕が上がる手筈だったのだが・・・、この時は、もう皆がバタバタしている。

再び幕が開いて、気を取り直して演技を開始したのであったが・・・

演技の前半部分で(落としてしまったスカーフが重要な役割りを持っている)そのスカーフが無いことに途中で気が付いた。

すぐに、助手の女の子にヒソヒソ声で「演技の順番を変えるからな・・・」と耳打ちしたのであったが・・・。

それまでに、私は一度もこの鳩出しの演技は練習でも失敗したことが無かったから、助手たちは初めて遭遇する緊急事態に慌てふためいてしまったのである。私の失敗のない同じ演技の助手しか務めたことがない経験が浅い1年生の女の子に、急に本番の舞台上でこれまでとはまったく違うことに即座に対応しろというのが、どだい無理な話であった。

リハーサルまでは完璧で余裕すらあった私の演技は、最悪のバタバタ、ドタバタな演技で終わったのであった。

当然ながら、私の演技の評価は最低なものであった。終演後にはまさに茫然自失であった。

これまでに築き上げてきたモノがガラガラと音を立てて崩れていった瞬間であった。

自信喪失。しばらくは立ち直ることができなかった。

結局この発表会での大失敗が、プロマジシャン断念の引き金になったのであった。

大学卒業後も、しばらくこの発表会の大失敗のことは思い出したくもなかったから口にもしてこなかったのだが、数年前に開催されたKMCの同窓会の時に初めて同僚らにも真相を話したのであった。

ジミー師の奥様のマコさんとI君にも同時に話したのだが・・・、I君いわくは『発表会の前夜にジミー師宅を訪問した際に、ジミー師から「鳩の羽を切れ」と言われたでしょう?』と言う。マコさんいわくは「先生が鳩の羽を切れなんて言う訳がないでしょう。鳩の羽をキレイにしろとは言ったけれど・・・」と言うではないか!

「鳩の羽をキレイに・・・」が、いつの間にやら「鳩の羽を切れ・・・」になって、演技者の承諾もなしに本番直前に羽を切ったのか?

(たとえ「羽を切れ!」と言われたのだと思ったとしても、リハーサルの段階で言えよな!本番直前に断りも無しにきいきなりハサミで羽を切るなんて非常識極まりないだろうに・・・)

改めてI君には呆れてしまう。こんなことで私のプロマジシャンへの道が絶たれてしまったのかと思うと・・・。

きっと、これがいまでも未練となって、悪夢となって時々襲ってくるのであろうなぁ〜。