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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2008-01-18-Friday マジック 学生時代編 3

いよいよ3年生としての発表会「第七回ザ・マジカルミステリーショー」を1979年11月16日(木)渋谷東京都児童会館ホールで迎えた。

一年前から3年生の幹部である鈴木宏保・田中良男・大西孝和との4人で綿密に企画を立てたマジックショーは3部構成にした。

まず、オープニングは伊藤君、大きな(180×90㎝)3枚のトランプの壁の中から登場してミリオンカード(手から何枚もトランプが出現するマジック)、最後に噴水カード(箱の中からトランプが大量に吹き上がるマジック)を終えると、後ろの黒幕全体がトランプの幕(90×45の大きさのトランプ100枚繋げて幕状にしたものを吊るす)に変化して終了という手筈であった。しかし、当日まで伊藤君がトランプ幕の製作をさぼって、本番直前のリハーサル時点でも実験が出来ずにいたので、最後の幕が変化する部分は急遽カットせざるを得なかった。やむを得ず、演技の最初から背景幕としてトランプの幕を張ったままでオープニングを行ったのである。背景が大きなトランプの幕の前で、小さなトランプを出してもインパクトが弱いから、オープニングの観客の度肝を抜く目論見は見事に外れてしまったのである。

第一部は前年に実験した「ストーリー性のあるマジック」で場所設定は「春の公園」1組の恋人、恋人のいない4人の男性、恋人のいない3人の女性の3組がそれぞれマジックを演じていく、最後に公園一杯に花を咲かせて終わりというマジックであった。背景をマジックに使うというアイデアで、これはなかなか好評であった。

第二部は新しい試みで「キャラクターに演じさせるマジック」である。キャラクターとして私が選んだのは「魔女」「せむし男」「ドラキュラ」「雪女」「番町皿屋敷のお菊」の五人の『おばけ』であった。

魔女は「ダンシングケーン」というマジックを応用して箒が空中を飛び回るマジック、せむし男は「四つ玉」というマジックを応用して魂に見立てた玉を増やしたり減らしたりするマジック、ドラキュラは棺桶から登場し「ゾンビボール」というマジックを応用した頭骸骨が空中に浮かぶマジック、雪女は歌舞伎のくもの糸と「ファンテンシルク」というマジックを応用した余韻を感じさせるマジックで最後に雪女が解けて消える場面では雪が解ける様にゆっくりと消える方法を考案して大好評を博した、お菊は井戸から登場して皿を沢山出すマジックを演じた。この第二部は大変に評判が良くて舞台の袖で見ていても感動したくらいである。

第三部の3年生4人は普通のスタイルのマジシャンがマジックを演じるものである。「時計」「電球」「帽子」と来て、最後に私はトリとして「鳩出し&ステッキ」を演じた。鳩出しはアマチュアマジシャン憧れの演目なのである。マジシャンは魔法使いではないから、取り出す鳩は普段から飼育していなければならない。演技では6羽の鳩を出すのだが予備を含めて10羽の鳩を購入し、アパートで飼育していた。猫にやられたり寒さで死んだりと大変な思いをしながら飼育していたのである。

ジミー忍師も「まずは全部自分で考えろ」と最初は一切指導してもらえなかった。試行錯誤を繰り返し、ルーティンを考えては師の前で見せることを何度もしながら、少しずつ演技が固まっていった。最後には得意のステッキのマジックと融合させたオリジナルのルーティンを完成させたのである。本番直前のリハーサルでも完璧な演技であった。

生き物を使うマジックは演じる直前までセッティングが出来ないという時間的制約の難しさがある。だから、セッティングにはとても気を使っていた。

本番の前日に最後のアドバイスをもらう為にジミー師の自宅に伊藤君と訪ねた。次年度に鳩出しを演じる彼にも覚えさせる為に手伝わせていたからである。演技はOKをもらった。師からは鳩の羽を切って洗った方が良いとアドバイスを受けてアパートに戻った。すぐに羽は洗ったのだが切らなかった。羽が長い方が見栄えが良いし、調教しているから客席に飛んでいく心配がなかったからである。

本番の出番が迫ってきた。アクシデントが発生したら困るからいつもよりも5分早目にセッティングを開始したのである。鳩の装着を始めたら、なんと伊藤君がハサミで一羽の鳩の羽を切り出したのである。「何をするんだ!バカヤロー!」と怒鳴ったのだが、時すでに遅し、悪い時に悪い事は重なるもので、よりにもよって彼が羽を切ってしまった一羽の鳩は、出した後に助手が構えるステッキまで飛ばして止まる様に調教した鳩なのであった。(つづく)