«前の日記(■2008-02-10-Sunday) 最新 次の日記(■2008-02-12-Tuesday)»
 | トップ |  | ビル概要 |  | テナント構成 |  | 沿革 |  | アクセス |

観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2008-02-11-Monday 視察旅行記5

「湯布院(1月)」

13日に温泉で一番人気の大分県湯布院に行った。宿泊した旅館は「亀の井別荘」である。7名という人数だったので、離れでも一番大きな「百番」に泊まる事が出来た。

我々が泊まったのは和式だが、この宿には洋式の部屋もある。

仲居さんが「わが家では・・・」と言う言葉遣いをしていた。小さなことだがとても好感が持てる。料理は大広間で食べた、味はまぁまぁといったところだ。飛び切り美味いと言うわけではなかったが地元にはこだわっていた。

温泉の大浴場は外の露天風呂は塀を上手に使っていて狭いけれども落ち着きのある空間になっていた。

談話室と言う場所があり、暖炉と本棚があって、コーヒー・紅茶のセルフのサービスがある。先客がいたが話し掛ける雰囲気になっていない。何かが物足りない、空間の大きさが中途半端なのだ。考え方としては面白いが、打ち解けずらい大きさの部屋であるのが惜しまれる。

ここの売店で売っているお土産はなかなか厳選されたもので品があった。

翌朝、町を散策してみたが、町の中は軽井沢の様な派手派手しさだ。外の資本の土産物屋が並んでいる。人の集まる場所に店を構えて少しでも儲けたいということなのだろうが、自分達で折角の風情を破壊してどうする。自分で自分の首を絞めているようなものだ。もっと全体がまとまって風情や景観を守らないと、湯布院とて凋落してしまいかねない。目先の商売のことしか考えない奴は困り者だ。

十勝のとある牧場で働いていて顔馴染みの夫婦が近くで牧場を始めたというので見学に行った。取水口のすぐ側で景観も抜群なのだが、隣が悪い。何故か飛騨高山の古民家を移築したレストランとその横には小さな分譲住宅のような貸し別荘が並んでいる。景観とは何か? 場所の意志とは何かを考えて建てて貰いたい。折角の場所が台無しだ。

昼食は、無量塔(むらた)という老舗旅館が経営する、アルテジオという音楽関係のミュージアムとレストランが一緒になったところで食べた。なかなか洒落ている。

湯布院は「亀の井別荘」「山荘無量塔」「玉の湯」の3軒はなかなかだが、その他との差が大きいと感じた。他のコバンザメ商法の店はこの3軒が作り出している雰囲気を壊さないことが肝心だ。

「安心院(1月)」

14日に行った安心院(あじむ)は農村民泊で有名になったところで、グリーンツーリズムの先駆的な活動をしているところだ。折角だから三名と四名に分かれて別々の家に泊まった。四名は矢野家に泊まり、私達が泊まったのは中山家で、囲炉裏のある家である。農家の離れを活用して民泊をしているのだ。

民泊を始めるに際しても家を改造したり設備投資などはしていないそうだ。トイレだけはシャワートイレにしたそうだが。

夕食も家族の人と一緒に同じものを食べる。自分の田畑で採れたものが材料で、グリーンツーリズム研究会で料理の勉強もしている。郷土料理をご馳走になったが、量が多いのにはまいった。食べなさい、食べなさいと次から次へと料理が出てくるがそんなにたくさん食べられるものではない。目の前で作ってすぐ出されるのだから残すわけにもいかない。親切で親身なのは嬉しいが、度を過ぎると苦痛になる。客の様子を判断しながらの対応が必要である。

自家製のどぶろくやワインでおおいに盛り上がり話し込んだが、意外なことにグリーンツーリズムの先生は十勝だという。新得や鹿追の事例が励みになり、交流もしているのだそうだ。我々ももっと近くに眼を向ける必要があると感じさせられた。

民宿を始めるには旅館業法という法律があってクリアするにはお金が掛かる。そこで会員制にして料金ではなく研修の謝礼という形にしてクリアしたとのこと。何事も諦めずに知恵を使えば道は拓けるのだ。結局後から行政が後追いで許可を出すことになった。民が官を動かしたのだ。

後から参加してきた農家との間に意識の差が出始めてるという、この一月から料金も値上げになるとのこと。最初の志を継続していくのは難しいのだろうか?

寝る段になって二階に上がったらそこが猛烈に寒かった。この日は外気温がマイナス3度で外は雪が降っている。私達が泊まる部屋は昔の蚕部屋で、下は車庫だ、部屋に暖房器具は無い。床からも冷気が伝わってくる。布団を二枚重ねにして寝たが、湯たんぽなども無いから自分の体温だけで暖まるしかない。朝起きたら両隣の顔がしもやけみたいに赤くなっている。かつての寒かった住宅を彷彿とさせた。

家の中は北海道が一番暖かい。北海道人は日本一の寒がりだ。

「黒川温泉(1月)」

15日は今や湯布院よりも人気があるという熊本県の秘湯「黒川温泉」の「山みず木」に泊まった。

途中に別府も通過したが、別府の廃れようは激しいそうだ。やはり、大型温泉が何でも自分のホテルの中に囲い込んでしまうから、ホテルは栄えても町が死んでしまうのだ。

黒川温泉は景観にも気を配っている。看板も落ち着いた色と大きさに統一されているし、何より、旅館同士が協力して温泉街を歩かせる政策を執っているところが素晴らしい。各旅館の露天風呂3軒に入れる「入浴手形」を発行していて、客は露天風呂のはしごをして歩くのだ。露天風呂にはシャンプーや石鹸も置いてない。ただ入るだけである。はしごしてもらえばお金を落としてくれる。客が出歩くから町に活気が出る。とても良い戦略だ。ただ残念だったのは健全な店ばかりであったことだ。やはり温泉は非日常の世界であるから、普段と違ういかがわしさも必要だと思う。例えば、ストリップや射的場やスマートボールetcがあった方が・・・

料金がリーズナブルなのに驚いた。湯布院の「亀の井別荘の百番」と山みず木の部屋とではたいして差が無いのに料金は三分の一以下である。若い女性に人気があるのもうなずける。仲居さんもとてもフレンドリーな対応で好感が持てた。料理はもう一つかな・・・

各温泉の露天風呂もそれぞれに特徴があって楽しかった。黒川温泉も始めから温泉街全体のコンセンサスがあって今の様な温泉街になった訳ではない。一人の変わり者が始めた露天風呂が流行って、皆が教えを請うてそれぞれに露天風呂を始めたのだそうだ。リーダーが始めた事を良いと思った人達が右ならえして行って出来上がったと言うのである。会議ばかりやっていたら出来るものも出来なくなってしまう。斬新なことは率先垂範でしか出来ないというのである。

たしかに黒川温泉は温泉街に来たという雰囲気があってとても落ち着く。湯布院の町のケバケバした不統一な景観とは雲泥の差だ。黒川温泉の方が湯布院よりも人気があるというのももっともだと感じた。