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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2008-02-28-Thursday 十勝の農業に新しい発想を

2006年3月11日(土)十勝毎日新聞掲載

昨年(2005年)春に、日本を代表する著名な企業の経営者の講演を聞く機会があった。その講演の中の一部を少々乱暴に要約すると「日本の農業は補助金で成り立っており、国際競争力が無い。日本は非効率的な農水産業は捨てて、もっと情報産業や工業に力を入れることでお金を稼いで、貧しい国から農水産物を買えば良いのだ。」という趣旨の発言をされていた。合理的な考え方をすると言われている経営者にはこの様な考え方の人が多いように見受けられるが、でも本当にこれで良いのだろうか?

人間は食べなければ生きていけない。外交の下手くそな日本の政府がいざとなった時に充分な食料の確保が出来るとは端から信じてはいない。農業を斜陽産業として一派一からげに論じているだけで、十勝の農業の実体をまったく理解していないのだろうと思う。

最近「地産地消」とよく言うが、実は日本全国どこの産地でも、本当に良い商品で金になるものは大消費地に送られてしまい。地元の人間が食べられないというヘンテコリンな現象が起きている。生産地ではない大都会が金と人口にあかせて良い物を集めているから、東京の方が産地よりも良い物を売っていることになる。そうして一旦集めたものを産地に戻すから、今度は時間も費用も掛かって産地の方が高くてまずいという図式になっているのだ。

収穫した以上は金にしたいというのは生産者の人情だが、これをずっと続けていくと生産地は永遠に搾取される一方で、やがて行き着く先には、金で外国から買えば良いと前述のようになってしまえば生産地の生活は崩壊する。これは何ともおかしなジレンマだ。

地球環境問題との関係も考慮する必要がある。例え安くても遠隔地の物を買えば、輸送する際に二酸化炭素の排出量が増えることになる。個々人が直接、物に支払う値段というコストは安くなっても、その分地球温暖化防止の為に使うコストが高くなってしまえば、税金などが高くなって、結局は個々人の負担が増えてしまう。

十勝で採れた農水産物をただ「十勝ブランド」として大消費地に送っているだけではこの問題は解決しない。むしろ、送るのではなく十勝に来て場所や旬を感じながら食べてもらわなければならない。かといって、十勝の農家は大量に生産しているのだから今のままでは地元で食べるだけではとても賄いきれない。農業と商業と観光が融合し、生産品目や生産方法も含めて発想のコペルニクス的転回が必要な時期が来ているのだとは思うが、まだまだ良いアイデアは出てこない。