風呂上りに鏡を見て驚いた。
そこには、十一年前に他界した父の姿が映っていたのだ。と言ってもホラー映画の話をしようというわけではない。
鏡の中には腹の突き出た醜い姿の中年おやじが立っていた。どこかで見た人だなと思ったら、父にそっくりになった私だった。
いつの間にこんなに似てしまったのだろう。
母に尋ねると、父も若い時はとってもスマートだったが、四十歳ころから太り始めたとのこと。「血は争えないねぇ」と言う。
ウヌヌ、遺伝子や恐るべし。
子供たちに「いずれはおまえたちだってお父さんのように太るかもしれないんだぞ」と醜い腹をさすりながら脅すと、冷たい視線が返ってきた。その瞬間父親の威厳は吹き飛んだ。
年齢を重ねるたびに、似たくないところばかり似てきてしまう・・・。
先ごろ、ヒトの遺伝子情報の解読がすべて終わったというニュースが流れた。
「007」の新作映画のように遺伝子を操作して整形するようにでもなったら、それこそホラーの世界になるのだろうなぁ・・・。