マリリン・モンローが大好きだ。
物心ついたころからの、筋金入りである。父がどこに行ったか分からない時に急な用事ができると、父を探しに行くのが私の役目だった。映画好きの父は、たいてい映画館にいた。
常連だった父が入館しているかどうかは、もぎりのおばちゃんに聞けば分かるのだ。上映中に館内放送はできないから、毎度、館内に入って連れ出すことになる。
当時の映画館はいつも立ち見客であふれていた。タバコの煙がモウモウとする中、人をかき分け一番前に出て、父を探し出すのである。
ある時、スカートが地下鉄からの風でまくれるシーンに出くわした。ショックで目がスクリーンにくぎ付けになってしまった。この時、すでに彼女はこの世の人ではなかったのだが・・・。
後年、テレビで「七年目の浮気」を見て、「あっ、あの時のお姉さんだ」とドキドキしながら名前を調べた。
以来、写真や絵や人形など彼女を描いた物を収集し、部屋はあふれかえっている。
もし彼女が生きていたら、今ごろは七十七歳のおばあちゃんになっているというのに、私のマリリン熱はまったく冷めない。