何でいきなりこんな話になったかというと、父の十七回忌が発端なのだ。昔の事を回想していて、そういえば「父とキャッチボールをしたことがなかったなぁ」と思い出した。
父は「ボール(球)に対する運動センスがまったく無かった」のである。その代わり器械体操や剣道などは上手かった様(実際にやっているところを見たことがない)である。
私が生まれたのは昭和33年、あの長嶋茂雄が巨人軍に入団した年である。物心付いた時にはON(王貞治・長嶋茂雄)は子供たちのヒーローであった。当時のテレビでやっていたスポーツといえば野球と相撲とプロレスしかなかったのである。
以前にも書いたが、私は小学校を卒業した時の身長が133cmしかなかったから、いつもクラスでは一番背が低かった。相撲とプロレスは格闘技だから身長の差はいかんともし難い。小さい分チョコマカできる野球しか活躍出来る要素のあるスポーツは無かったのである。上手くなりたいから、父にキャッチボールをして欲しいと頼んでも「嫌だ」と言ってしてくれないのである。父は小学生が投げる球でも怖くて受け止められないと言うのである。仕方がないので住み込みの従業員の人に相手になってもらってキャッチボールの練習をしたものだった。
父は「動いて飛んでくる球は怖いが、止まっている球を打つのなら大丈夫だろう」とゴルフを始めた。まだ帯広にゴルフ場が出来る前に釧路に出掛けてゴルフをやっていたのである。私の「新しいモノ好き」の性格は父の遺伝かも知れない。
しかし、いくらやっても上手くならなかったようである。その内、帯広にもゴルフ場ができて後輩が始めるようになると、ドンドン抜かされて行く。「あいつに教えてやったのは俺だ」なんて言っていたが、後輩に負けるのは嫌だったのだろう。スッパリとゴルフを止めてしまった。
物置に父のゴルフクラブが残っているが、当時の最高級のクラブであったマクレガーのウッドとスポルディングのアイアンのセットである。どちらもチョットでも芯を外して打つと手がビリビリとシビレる、スイートスポットが極端に小さいプロ用のクラブだ。現在の私でも使いこなす事は難しいクラブである。
きっと高いクラブほど使い易いクラブだと思って買ったのか、それともゴルフショップの店員に騙されて買ったのかであろう。
素人が使える様なクラブではないのに、こんなクラブでやっていたのでは上手くならなくて当然だと思う。
見栄を張らずに、初心者用のクラブでやっていたらもっと上手くなれただろうに・・・。
高ければ良いというものではない。道具選びもセンスの内のひとつだと実感した。