結婚二十年目を迎えて梅雨真っただ中の六月中旬に、沖縄方面にハネムーン以来の夫婦水入らずの旅に出た。
「梅雨が明けてから行きたい」と言う妻を、「俺は晴れ男だから」と強引にスケジュールの隙間に日程を入れた。
宣言通り、移動中は雨が降っても、見学する時には見事に晴れて傘いらずで、晴れ男の面目躍如であった。ただし、一日を除いては・・・。
西表島の港からホテルに向かう途中で運転手さんが「今から雨の壁の中に入ります」と言う。五十メートルほど先で雨が激しく降っている様子が車中からも分かる。滝に突入したような感じでワイパーなど役立たないものすごい豪雨だ。この雨が一日中降り続いた。
ホテルは日本最南端の温泉で露天風呂を水着で楽しむ場所だったので半分やけ気味で露天風呂に入った。風呂で体が温まったら雨のシャワーで冷やすことを繰り返すのだが、これが思いのほか心地良かったのである。しばらく一人で楽しんでいたのだが、いつまで待っても妻が出て来る様子がない。しばらくすると近くの山にすごい雷が落ちたのでさすがの私も恐くなって内風呂に替えた。
妻は「そんなばかなことをする人間はいない」とあきれていた。一緒に楽しもうと思ったのにいまだに夫の嗜好を理解していない。
めったにできない面白い体験だったのに・・・。