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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2008-07-12-Saturday まちづくり(4)

2000年2月25日(土)十勝毎日新聞掲載『人優先のまちづくりと地域の利益〜地域全体を考えた消費を 身近で低予算な「屋台」の発想へ〜』

自動車は十勝の生活必需品とはいえども、地球環境問題から考えてみても現行の車社会の有様はとても歪であるとしかいえません。特に道路は自動車のためにあるという考え方は高速道路ならいざ知らず、一般道路を我がもの顔で通行するようになったのは、たかだかここ40年程のことではありませんか。市街地とくに都心部における道路は車のものではありません。元来人のためのものなのです。

十勝は車中心社会だからこそ、安心して歩ける、人間優先の本来の機能を持った道路が都心部には必要だと考えます。しかし、今すぐに車を都心部から締め出せと言っている訳ではありません。適切な駐車場と公共交通機関等の整備をしなくては、誰も「まち」に来なくなり、それこそ都心部は廃墟と化してしまいます。長期的なビジョンを明示し、十分な準備をしてから実行する必要があるでしょう。

ところで、最近とても気になっている言葉に「合成の誤謬(ごびゅう)」というのがあります。これはミクロレベルでの合理的判断が、マクロレベルでは不合理を生み出すという意味に使われています。

分かりやすく「まちづくり」を例にとると、ある地域において、消費者が商品を安く、かつ便利に買いたいと思い、郊外の中央資本の大型ショッピングセンター(SC)に車に乗って買い物に行くという行為は、それ自体は合理的な判断に基づく行動だといえるでしょう。個人レベルとしてはごく当たり前の選択です。しかし、地域住民の多くがその選択をしたときは結果として、中央資本の大型SCが地元の商店街を駆逐し、消滅させてしまうことになります。これには、ある種の市場原理が働いているといえなくもありませんが、その結果がそこの地域全体を幸せにしているとは限らないのではないでしょうか。

消費者個人は一円でも安く商品が購入できればそれで良しと考えます。そのこと自体は間違ってはいません。しかし、多少高かったとしても地元資本の店舗で購入すれば利益はその地域に循環します。利益が他に逃げる事無く順にその地域全体を巡ることになれば、やがては消費者の元にも還元されることになります。一方、中央資本の大型店で消費したお金は、ほとんどすべてが一旦中央に集められ一部分が地域に再配分されるのみです。これではその地域は富の蓄積ができずいつまでたっても豊かにはなれません。地域を豊かにするには、地域全体の利益のことを考えた消費行動が必要と考えます。

以上四章にわたって解説してきましたが、これらの研究の中から私たちが導き出した「まちづくり」のキーワードは、長期ビジョン策定・人間優先・こころのよりどころ創造・コンパクトシティ(縮小再構築)・都心部居住・適正年齢構成配分・公共交通機関充実・低コストなどでした。そして、このキーワードを更に追求し、人任せや行政任せなどにならず、自分達が自ら起こせる低予算の活動として「屋台」がクローズアップされたのです。