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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2008-10-28-Tuesday 温泉街

十勝川温泉のホテル経営者と話した。

今年は7月7〜9日に開催された洞爺湖サミットの影響で北海道中の観光関係は壊滅的な打撃を受けたというのである。

世界中の要人が集まるのであるからテロを警戒して厳重な警備体制を引くであろうという予測を一般の旅行客が持ってしまった。特に玄関口である空港の警備はどの空港も厳重であろうと。

空港での過剰なチェックで嫌な思いをしたくないというのは、ごく当たり前の感情である。当然その時期への北海道への旅行は控えようと考えるのはごく普通の感覚だ。

ご当地洞爺湖のホテルが良かったかといったらどうやらそうでもないらしい。一般客は敬遠するので会場になったウィンザーホテルのみが世界中にアピールできて良かったという程度だという。

このサミットの影響は、さすがの旭山動物園も受けたようで今年の入場者数が減少してしまったという。多額の経費を掛けてサミットを開催しても何のプラス効果も無かったどころか、かえってマイナス効果ばかりであったと言うのである。

そこに来てこの世界的な不況である。

観光関係者によると、普通は円高になると日本人が海外に出掛ける海外旅行が増えるのだが、この不況ではそんな悠長な気分にはならないだろう。かといってその分、国内旅行をするかといえば、不況の時に真っ先に控えるのが旅行だから、それも無いだろう。中国や韓国からの旅行客も円高では、メリットがないから日本には来なくなるという。世界的に景気が回復し円安にならないと日本の観光業は立ち直れないと力説していた。

今回の世界的な金融恐慌は観光にも大打撃を与え始めている。

日本の温泉地はこれまでホテル内への「囲い込み」政策を取ってきた。すなわち、御土産屋やバーやラーメン屋やカラオケまでホテル内に造って、一旦中に入れた客をホテルから一歩も外に出さずにホテル内で全ての消費を行わせようとしたのである。結果として温泉街は廃れてしまった。

温泉街に何故、人が行くのだろうか?風呂に入るだけなら各家庭にだって風呂は付いているのだからそれは理由にはならない。湯池に行くのかといっても一泊二日では療養にならない。私は「非日常性」を楽しみに行くのだと思うのである。

温泉街では浴衣に下駄履きという全員が同じ格好をしているから「匿名性」があるのである。どこの誰かというのが判らなくなるから、日常生活ではできないことをしたくなるのである。だから温泉街にはストリップだとか秘宝館だとかという妖しげな場所があって、皆で羽目をはずして普段は行けないそんな場所に行って日常から開放されたのである。ホテルの中に造る施設にはそんな不健全なものは造るわけにはいかない。温泉街というのはホテルでは造れない猥雑な雰囲気作りに貢献していたのである。それが消滅してしまった。

会社ぐるみの社員旅行というのも無くなってしまった。温泉街に非日常性が無くなってしまえばわざわざ一泊で温泉地に行って酒を飲まなくても、街中の居酒屋で飲んだって同じことなのである。温泉ホテルは自分で自分の首を絞めたのである。