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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2008-10-29-Wednesday トリックスター

土曜日に買った本

「トリックスター列伝」(松田道弘著、東京堂出版、10月20日発行)が面白くて一気に読んでしまった。副題に「近代マジック小史」と付いていてマジシャン、ペテン師、イカサマ賭博師、霊媒などのことを書いた本である。マジック関係の本を5000冊も収集している人間としては「マジック」とか「奇術」とかいう文字を目にすると買わずにはいられなくなるのである。

マジシャンのことについては他の本でも読んだことがあるのでそれほど新鮮な内容ではなかったが、イカサマ賭博師とペテン師の項には笑わされたし、とても為になった。

特に20世紀はじめに活躍(?)したタイタニック・トンプソンと仇名されたギャンブラーの話は傑作である。この仇名のタイタニックというのは有名な沈没した豪華客船からきているというが、その説にも3通りの言い伝えがあり、どれが本当か判らないというから面白いではないか。このタイタニック・トンプソン(本名:アルヴィン・C・トーマス、1892年生)はサイコロ賭博であれポーカーであれゴルフであれ何でもござれのギャンブラーで、とりわけ「プロップ」の名人であったという。「プロップ」というのはProposition Bet(プロポジション・ベット)(提案する賭け)の略で「ある条件を提示した賭けをもちだし、その賭けにチャレンジさせるようにしむけるやり口」のことをいうそうだ。

プロップは相手に挑戦に応じてやろうというヤル気を起こさせることが先決で、しかも相手に自分は絶対に負けるはずがないと思い込ませることが肝心なのだという。しかし、一番大切なことは賭けの成立が自然発生的に見えることで、その場の気まぐれでとっさに思いついた様にみせることだというのである。何等の準備もしていない(または用意できるはずがない)と相手に思い込ませることが重要なのだという。

トリックの本質は、相手が考えてもいないところで秘密の準備が既にできあがっていることにある。というマジックの考え方にもピッタリ当て嵌まるのである。

彼のことを紹介した新聞記事には「ゴルフボールを1マイル飛ばしてみせるという賭けに勝った男」というキャッチフレーズが載っていたそうだ。その経緯は、ある時ギャンブル仲間とゴルフボールを400ヤード飛ばしてみせるという賭けを成立させた。ただし、コースは彼が選ぶという条件で。彼が一行を連れて行ったのは500ヤードの高さの崖の上だった・・・。怒りの収まらない被害者に、今度は必ず平地でやるという条件でもう一度賭けをさせた。ある寒い朝に賭けの相手を連れ出したのは一面に氷の張った湖だ。彼が打ったゴルフボールは600ヤードを優に越えて転がっていった。「何だったら距離を測ってみるかい。きっと1マイルはあるぜ」こんなセリフをはいたのだろう。そこから前述のキャッチフレーズなったそうな。

このゴルフのエピソードは北海道でゴルフやっている人間には真実味があるのである。私も10年ほど前のゴルフを盛んにやっていた頃は、雪が降ってゴルフ場が閉鎖になるまでしつこく通ったものだった。12月初旬の寒い朝などにゴルフ場の芝が凍っていたらボールが止まらずにどこまでも転がっていくのだ。地を這うような低いボールを打ったら400ヤードドライブも可能なのである。池もまったくヘッチャラだ。ボールが凍った池にいくとカーンと氷で跳ねてもっと遠くにいくほどなのである。そんな状態のゴルフ場でプレーしても良いスコアにはならないから今は行かないが・・・。

この本のエピソードを全て紹介するわけにはいかないがとにかく面白い本である。一読をお勧めする。