小学生の時からずっと通っている床屋さんだ。その床屋さんには鏡に映した状態で正常な画面に見えるテレビと時計がある。つまり客が鏡越しに普段と同じ状態で見られるようにブラウン管が反転しているテレビなのである。
今朝はBS放送でアメリカの野球のワールドシリーズを放映していた。試合はフィリーズが4−3でレイズを下して、ワールドチャンピオンになったのだが、テレビを見ていて不思議な感覚がしたのである。
散髪している時には普通の状態で見られるのだが、洗髪する時に席を立ってテレビ画面を直接見ると左右が逆転している訳である。ピッチャーには右腕もいれば左腕もいるし、バッターにも右打ちもいれば左打ちもいるから、ピッチャーがバッターに向かって投げているだけなら何にも違和感を感じないのだが、席を立って洗面台に向かう時にたまたまバッターが球を打って走り出したのだ。ところが左右が逆なものだから、バッターが三塁に向かって走っているように見えるのである。アレッと一瞬不思議な感じがしたのである。普段見慣れている光景とは逆の状態で見ると心が急に落ち着かなくなるのである。
精神の小さな動揺が起こったのであった。たかだかテレビの画面なのに普段と違う状態のものを見ただけでこんなに動揺するなんてと可笑しくなってしまった。
この感覚はマジックにも使えるなぁと一人ニヤニヤしながら散髪を終えたのであった。