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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2009-02-05-Thursday 泡坂妻夫

作家の泡坂妻夫さんが亡くなった。

私にとってはアマチュアマジシャン厚川昌男としての方が馴染みが深い。氏のペンネームは本名の「あつかわまさお」をアナグラム(組み替え)して「あわさかつまお」にして漢字を当てたものである。このことからも判るようにとても茶目っ気と人を楽しませるエンターテインメント性のある人だった。

氏との出会いは、大学1年生(昭和51年)の時に杉並区荻窪駅近くにあった邪宗門という喫茶店にマジシャン仲間に連れて行ってもらった時であった。ここ邪宗門は昭和33年にアメリカから帰朝したプロマジシャン石田天海氏の薫陶を受けたアマチュアマジシャンで、邪宗門のオーナーでもあるフロタマサトシ(風呂田正利)氏が主宰する「邪宗門奇術クラブ」の本拠地、ここにマジック愛好家が集まってはマジックを披露しあうという場所であった。会員には厚川昌男さんや高木重朗さんらアマチュアマジシャンの有名どころがいたクラブなのである。

マジックが好きだと言えば、誰にでも気軽にマジックを披露してくれた。

私が初めて訪れた時にマジックを見せてくれたのがたまたま厚川昌男さんだった。あまり冴えないオッサン(失礼!)がトランプのマジックを5種類ほど見せてくれた。どれも初めて見るカードマジックで一緒に行ったマジック仲間と驚嘆しあったのであった。まだ上京したてでマジック界の事情に疎かった私は厚川さんが有名なアマチュアマジシャンで創作奇術家であることを知らなかったのである。

この邪宗門奇術クラブのメンバーはオリジナルのマジックを創作する人たちの集まりであったのだ。

以来何度かお会いする内に、推理小説も書いているのだという話を聞いた。「推理小説は私も大好きです」と言ったら出版したての「11枚のトランプ」という本を頂いた。幻影城ノベルズのアンカット・フランス装丁版(装丁が1ページ毎に切れていないから、1ページ読んだらペーパーナイフで切りながら読む)である。本好きな私はせっかくのアンカット版を切ってしまてはモッタイナイと思って、ビニールに包んで保存し(いまだにそのままビニールに包んだままの状態で保管してある)、すぐに本屋に行って普通の装丁版を購入して読んだのだった。

この「11枚のトランプ」はその後日本推理作家協会賞を受賞した作品で、マジックの11のエピソードを軸にストーリーが展開していくものでそれまでの推理小説とは一風違った作品であった。以来今度はすっかり作家泡坂妻夫氏のファンになってしまった。

その後に出版された「乱れからくり」は映画にもなって、氏は全国的な有名人になってすっかり忙しくなりなかなか会えなくなってしまったのである。

氏の作風は随所に「仕掛け(トリック)」がほどこされ、知っていても、知らなくても両方楽しめる様になっている。少々無粋だが、氏が創作した名探偵「亜愛一郎」という名前は「探偵名鑑」のようなものに探偵名がアイウエオ順でもABC順でも並べられる時に一番先に載るように命名したというのである。しかも、その後に同様の事を考える作家が出てきても絶対に一番先を確保するようにしたのだと言っていた。

その後は推理小説だけではなく時代ものなど他の作品も描き、泉鏡花賞や直木賞も受賞した。

私がもっとも尊敬し且つ目指す存在が、75歳で亡くなられてしまった。まことに残念である。