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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2009-05-19-Tuesday 読売新聞「風向計」

5月8日(金)読売新聞北海道版に掲載された「風向計」の原稿

『商品を売る「場所の力」』坂本和昭

米国の衣料専門店チェーン「フォーエバー21」の日本1号店が4月29日、東京・原宿にオープンした。原宿には、低価格のファッションブランドで知られる「ユニクロ」や「H&M」がすでに店舗を構えている。「フォーエバー21」は「H&M」のすぐ隣に出店し、相乗効果を狙う戦略だという。

テレビ番組に映し出された商品は驚くほど安い。上着から靴まで購入しても、トータルで1万円程度で済む。安価で新しいデザインの製品を次々に投入していく販売手法は、「ファストフード」をもじって「ファストファッション」と言われているそうだ。

お気に入りの商品をその時に購入しておかないと、次に来店した際には売り切れになっている。人間心理を巧みについた実にうまい戦略だ。

ふと感じた。「日本1号店の出店地がなぜ原宿だったのだろうか?」と。

私の暮らしている帯広でも、商売がうまく場所と、誰が運営しても不思議とうまくいかない場所が存在する。うまくいかないのは、場所のイメージと商売が合致していないからではないかと考えている。

商人の中には、家賃の高低だけで出店場所を判断する人がいるが、こういった人の商売は、経験則から言ってうまくいかない場合が多いように思う。多少、家賃が高くても、来場者が多い場所であれば商売のやり方はいくらでもある。逆に、家賃がいくら安くても人が往来しない場所ならば商売は難しい。実力があっても、たった1店だけで人の流れを変えるのは至難の技だ。

「フォーエバー21」の場合、同じ東京でも下町に1号店を出店していたら、顧客はどう反応するだろうか。良質な商品でも、安価であるという点に力点が置かれて「安かろう、悪かろう」との連想を顧客に抱かれてしまうかもしれない。

最新ファッションに敏感な「原宿」という土地柄を踏まえて、「ファストファッション」を展開する。その結果、成功する可能性は高まるだろう。

人間はいったん抱いた先入観を取り除いたり、変えたりすることは難しい。だからこそ、最初に「安価で良質な商品を売る店」というイメージを築く必要があるのだ。

訪れてもらう人々の心をとらえて安定的な基盤を築くには、計数頼みでは限界がある。このことは、商売でも観光でも同じだと思う。「フォーエバー21」の日本進出は、「場所の力」の重要性を、改めて私たちに教えている。(終わり)

この掲載文を読んだ札幌の読者の方から18日の朝お電話を頂いた。「私は6〜7年間、帯広に暮らしていたことがあるものだが、現在は隠居して札幌に暮らしている者だ。先日の読売の風向計を読んで、感動した。貴方はスゴイ!人だ」と言って私のことを盛んに褒めるのである。どうも話が微妙に噛み合わない。この文章のどこが一体スゴイのだろうか?と思って聞いていたら、私が「フォエバー21」をプロデュースして原宿にオープンさせたと思い込んでいる様子なのである。途中からそれが判ったので「内容を誤解してますよ」とお話してなんとか納得してもらった。一体この文章のどこをどう読んだら私が「フォエバー21」を出店させたように読めるのだろうか?

世の中に蔓延する誤解というものは、きっとこんなことから始まるのだろうなぁ〜。