5月の連休明けに東京新宿で大学のマジッククラブの同窓会が開催され、それに出席して来た。
その後に「クラブのメンバーがYAHOOの掲示板上でメールの交換をしているのに、何故、君は参加しないのだ?」とのこと。単に入り方が判らなかったので見ていなかっただけなのである。入り方を教えてもらいようやく先日から参加することが出来た次第である。
そんなやりとりをしながら、ふとマジックの事を考えてみた。
今回の同窓会の前日に東京入りした私は、かつてのマジックの師の故ジミー忍師の未亡人のマコさんを呼び出し、一緒に六本木でマジックシアターとマジックバーをはしごして楽しんだのである。
その時に若手のマジシャンの演技を見て、最近の若手は上手いなぁ〜と感心したのであるが、何故だか心のどこかに引っ掛かっているものがあったのだ。技術的には上手いのだが、何かが足りないのである。
私がプロマジシャンを目指していた1970年代後半にはビデオデッキはまだ普及していなかったから、マジックを教えるビデオソフトなんてものも当然無かった。
新しいマジックの知識は本で覚えるしか方法がなかったのだが、1人で本で覚えるのはかなり難しいことだったのである。なにせ、ビデオなら「こうやって持つのです」の一言で、ものの3秒で済んでしまうカード(トランプ)の持ち方を説明するのに、解説書では3ページも費やすぐらいなのだから・・・。
床に足を前に投げ出して座り、壁に鏡を立て掛けて、本のページを足で押さえながら、絵をみて、文字を読んで、手を鏡に写しながらマジックを勉強したものである。それか、師匠に付いて習うしか無かったのだ。
私は毎日の様にジミー師の家に通っていた。師が手を取って教えてくれる訳ではない。師が練習している姿を見ているか、ビデオを見せてもらうかだけなのだ。が、師はたまに気が向いたらマジックを演じて見せてくれる。それを見て覚えるのである。でも何故だかとても居心地が良かったのだ。そこにはコミュニケーションというものが存在していた。相手の考え方や性格が判って初めて教えられるものがある。
現在のマジックのDVDが氾濫(東急ハンズなどで販売している)している今の世の中なら全くの素人でもすごい技術を身に付けられるかもしれない。しかし、そこにはコミュニケーションというものが介在していないから一方通行の独り善がりのマジックに陥りがちだと感じるのだ。
DVDから一方的に得る知識は、私が師から教えてもらった技よりも遥かに高度な技であるが、コツというものを直に習っていない人にはその一番重要なものが伝わらない。
いわゆる芸事の伝承に一番大切なのは、人から人へと伝えられていくコツにあると思うのである。
DVDでマジックを習得した人たちは確かに上手いが、でもどこかが下手なのだ。それが直にしか伝えられない部分だと思うのである。
インターネット全盛で、益々、知識は得やすくなっているが、何かとても重要なものを置き去りにしているように感じる。
便利なだけでは伝わらないものがあることを理解するべきだろう。
これからは人と人とのコミュニケーションこそが大切な世の中になっていくと思っている。
インターネットは便利だが何かが足りない様に思う。(5日19:30記)