2010年2月19日(金)読売新聞北海道版掲載「虫食い市街地の矛盾」
現状の日本の政策では日本人の人口が増える要素は見あたらない。人口が増加していたこれまでと、減少する今後とでは、ものごとの対応を180度逆転させる必要がある。
例えば、住宅。人口が増え続けていた時代には、郊外にドンドン宅地開発をして街を広げていった。新興住宅地に家を買った人たちは、若い世代の夫婦が多かったから、買った時にはすでに子どもがいたし、越して来てからも子どもが増えた。だから、小中学校が新たに開校していった。
開発が一段落し、その地域の流入者がストップすると、平均年齢が上がり始める。新たに子どもは生まれなくなる。人で溢れていた小中学校はやがて生徒数が激減し、統廃校されていく。子どもたちは進学や就職でその地域を離れていく。かつての新興住宅地は、新陳代謝がないから、やがて老人ばかりの街になる。
そうした住宅地は、公共交通機関が充実していない所が少なくない。若い頃は自動車で移動することが多く、それを見越して開発されたからである。高齢者の運転は危険だ。車に代わる日常の移動手段に支障をきたすというのが、新興住宅地がたどるひとつのパターンである。
1世帯に複数の子どもがいるなら、誰かが親の建てた家に戻ってきて暮らすかもしれない。しかし、一人っ子と一人っ子が結婚したら、どちらかの親が建てた家は不要になる計算だ。
人口が右肩上がりに増え続けている時代なら、街を広げる意味はあっただろう。だが、減り続ける時代には街をコンパクトにまとめる必要がある。コンパクトシティー化である。
私が暮らす帯広では中心街に空き地が目立ち、活用されていない場所が増えている。それでなくても不況で税収が落ちているご時世に、固定資産税は高いままだから空き地になっていくのだ。倒産したビルを安く手に入れた業者も、結局ビルを活用できなくて、固定資産税を軽減させるために解体して更地にする。中心街で一生懸命努力しているビルは、周りが空き地だらけで寂しくなり、ますますテナントが集まらなくなる。これは悪循環そのものではないか。
税金に対する考え方を180度変える必要がありはしないか?
ビルを活用する努力もしないで解体して駐車場にしているオーナーには高い税金を掛けて高度利用を促し、逆に頑張っているオーナーには税金を軽減するというのはどうだろう。現在の税制は現状にマッチしておらず、税制が逆に街を寂しくさせることに拍車を掛けている。その矛盾を解消するのだ。
虫食い状態にしたまま街を広げたから、今冬のように雪が多いと除雪費が嵩む。除雪が十分でないと歩けない街になってしまう。北海道のような雪国におけるこれからの街づくりは、コンパクトにまとまって暮らすことを考える時代になったと思う。