53回目の誕生日だった。
朝、起きて新聞を読んでいたら、妻が「今日は、ナ〜ンの日だ?」と普段と違うトーンの声で聞くので、咄嗟に考えを巡らし、直後に妻の誕生日であることを思い出して「そりゃ〜君の誕生日だよ」と瞬間的に答えることができた。ここで時間が掛かるとエライ事になる。
「何かプレゼントがあるの?」と聞くので、プレゼントなど用意していないから「形ではなく愛情で示すよ!どこかに夕食でも食べに行こうか?」と答えた。
すると「競馬場に出来たとかちむらで食事をして、馬券を買ってみたい」と言う。
私はギャンブルが嫌いだから、競馬はやったことがない。ばんえい競馬も、去年、東京から来たお客さんを連れて行った際に、付き合いで初めて買っただけなのだ。買い方も予想の仕方も全く判らないが、まぁ、行けばなんとかなるだろうと息子と三人で自宅から歩いて行った。競馬場は自宅から徒歩20分程度で到着する距離だ。
競馬場に入るには一人100円の入場料が掛かる。手前のとかちむらで買い物や食事をしたら招待券をくれるというので、先にピザぐらい食べて招待券をもらおうかと提案したのだが、妻は、まだお腹がすいていないから、先に馬券を買おうと言う。自分でお金を出す時なら、100円でも惜しむくせに・・・。
300円を私が支払って入場し、馬券販売所に行ったら、第8レースの締切り5分前だというので、買い方が判らないから、口頭の販売所でおばちゃんの説明を聞きながら「馬連」というのを適当に200円ずつ4つ買った。妻と息子は200円ずつ、3つずつ買った。馬券は自分のお金で賭けなければ悔しさも嬉しさもないと思ったから、自分のお金で買わせた。
レースが始まる前に、入口付近で「ビアガーデン」をやっていたので、ビール3杯を買って、飲みながら応援した。
妻が買った馬券が1,020円ついて2,040円になった。600円の投資が2,040円になったと大喜びである。1000円賭けていたら10,200円になっていたと、レバ、タラの話をする。
そんなことを言っていたら、誰でも億万長者になれるってもんだ。
まずは、妻が良い気分になってくれたのは良かった。
このビアガーデンだが、今日が最終日だという。客は市役所の職員や、市議会議員の所属する会社の社員や、青年会議所のOB会の連中など、見知った顔ばかりである。身内にしか券が売れなかったのだろうか?
でも、「とかちむら」という飲食店街が出来たのだから、このビアガーデンは営業妨害になるのではないのかしら?とフッと思ったのだった。
その後、妻はこの第8レースで稼いだお金を増やそうと思ったらしいが・・・、そんなに簡単なものではなかった。
第10レースまで競馬場でビールだけで過ごしたが、お腹がすいてきたのでとかちむらに入って食事をした。
とかちむらは競馬場内の施設なのに、馬券を買う場所もないし、テレビの中継や放送もない。
運営者のポリシーなのだろうが、競馬場の施設なのだから、せめてテレビの2〜3台位は客の見えるところに設置しておかないと、いちいち競馬場まで確認しに行かなければならず。まことに不便である。
結局第11レースまでやって妻は0円、私は4000円、息子は1000円のマイナスで、競馬場に貢献してきたのだった。