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坂本和昭のブログ


■2010-09-16-Thursday 読売風向計

読売新聞北海道版「風向計」2010年9月16日掲載

「新卒」重視は本末転倒

「大学は出たけれど」(1929年・小津安二郎監督)は、大卒者の就職率が30%だった不況の昭和初期を舞台にした映画だが、今年の大学4年生も、リーマンショック以来の不況で大変な就職難にあるという。いつの時代に生まれるかは運命だが、時にその運命は残酷にもなる。

47〜49年の3年間に生まれた約800万人の「団塊の世代」の人たちは、彼らが中卒で集団就職し始める63年頃には「金の卵」と呼ばれた時代があった。団塊の世代の大学進学率は15%だが、そもそも人数が多いから熾烈な受験戦争があった。しかし、大卒者は少ない時代で、景気も良かったから就職先には困らなかった。つまり、入るのは難しいが、卒業して就職するのは楽だったのだ。

現在の日本は、高校への進学率は98%、ほとんど全員が高校に進学する時代だ。大学への進学率は50%、大学を選ばなければ、受験生の全員が大学には入学できる計算だ。大学側もオープンキャンパス等をして学校のPRに努めたり、オールOK(全員合格)の略だなどと揶揄されたAO入試など、筆記試験以外の門戸も増え、あの手この手で学生を確保している。つまり、入るのは容易いが、卒業しても就職口は少ないという時代だ。

日本の企業は、新卒者を採用する傾向が強い。希望の企業に採用されなかった学生が「新卒」の肩書欲しさのために、大学院に進学したり、わざと1単位だけ落として留年するケースもあるという。いわゆる就職留年で、学費を払うために、アルバイトをしながら週に1日だけ登校するというケースもあるという。これは本末転倒で社会にとっても本人にとっても不幸なことと言わざるを得ない。

これを契機に、大学を卒業したらすぐに会社に入るのではなく、2~3年はボランティア活動をするなり、海外を観て回って視野を広げるなどして社会性を豊かにしてから、じっくりと自分に合った職業を選択した方がよいのではないか。かくいう私の大学4年生の次女にはそう勧めている。

考えれば、大学で勉強しながら就職活動をするというのもおかしな話だし、最近はたった3年で会社を辞める若者が増えているという。就職はしてみたものの、やりたかった仕事と違ったという人が増えているのだろう。

就職率の高い大学のドキュメント番組を見たが、何だか職業訓練校みたいに感じた。企業のほうも、新卒者を一から指導する余裕がなくなっているのかもしれない。

最近の政府の対策では、卒業後3年以内の既卒者を、新卒として採用した企業に奨励金を支給するという。それも結構だが、もっと学生を直接支援する仕組みも同時に考えるべきだろう。