荻原浩著「砂の王国 上・下(講談社刊)2010.11.15発行」の新刊である。
当初は、この年末年始にインターネットオークションで落札した「ヒトラー」関係の本を読破するつもりであったのだが、ヒトラー本は一冊読んだだけで飽きてしまった。あまり目新しい解釈がなされていないように感じたからだ。
年末に発売された週刊誌の書評欄でこの「砂の王国 上・下」の解説を読んだら、「証券会社をクビになってホームレスになった男、冴えない辻占い師の男、正体不明の超ハンサムな若い大男のホームレスの3人が手品まがいの技法やコールドリーディングを使って、新興宗教を起こして、やがて・・・」的なことが書かれてあった。
私の研究分野である手品のことや、コールドリーディング(全く素性も経歴も知らない人間を会話しながら相手の表情などを観察して推察し、術者の持っていきたい方向に誘導していくテクニック、これに対するホットリーディングは事前に相手の素性や経歴などを調査した上でおこなう誘導テクニック)や占い師のテクニック(肯定、否定のどちらにも解釈出来る様な言葉を出して、相手に勝手に当たっていると思い込ませるテクニックの一種)(例をあげれば「貴方のお父さんは、なくなっていませんね」という言葉。これは「既に亡くなってしまってこの世には居ませんね」とも「まだ死んでは、いませんね」のどちらにも解釈できる。これを聞いた人が、自分に父親の状況に当て嵌めて勝手に当たっていると錯覚する。一度当たっていると思い込むと、この人はすごい!どうして判るのだろうか?と勝手にドンドン信じてしまう。)のことが書かれているらしいので、興味を覚えたから読んでみることにしたのだ。
作者の荻原浩氏の本を読むのはこれが始めてである。なかなかに文章表現能力に優れた作者のようだ。
グイグイと小説に引き込まれ、早く結末が知りたくなって途中で止めることが出来なくなり、一気に読み終えてしまったのである。
社会から見捨てられたホームレスが、社会に復讐しようと新興宗教を金儲けの手段として造っていく過程、カルト新興宗教に取り込まれていく人間の弱い心理、成功した後の仲間割れに至る心境の変化、などの描写が秀逸であった。
コールドリーディングは研究した跡が窺えるが、ただマジックの描写はもう少し研究する必要があるだろうなと感じた。19世紀のマジックのタネが出てきただけだったからだ。
序盤から後半までは、一気に読ませるが、ラストがどうにも気に入らなかった。この後が知りたいのに。
この本が売れたら続編でも書くつもりなのだろうか?
この本は、映画にし易い題材だから、おそらく近いうちに映画化されることになるだろうと思う。
なかなかに面白い本であった。
午後から、とかちプラザのレインボーホールで、2009年にラスベガスで開催された世界ジュニアマジック大会でグランプリを獲得した現在20歳のマジシャンHIROKI HARA(原大樹)の演技が見られるというので、妻と2人で見に行った。
すると、前半は「ツキを呼ぶ魔法の言葉」という本を書いた五日市剛さんという人の講演会であった。五日市氏が書いた本を、この人もあの人も読んで実践したら、こう成功したと、石川遼、浅田真央や鳩山由紀夫などの有名人の名前を多数上げていたが・・・。
自分で自分に「ありがとう」という感謝の言葉を常に話掛けなさい。という話なのだが、「砂の王国」を読み終わった直後では・・・・・。
マジックの方も世界一というには・・・・。
まぁ、こんなもんかなぁ〜。自己暗示とイメージトレーニングとポジティヴシンキングのことを簡単な言葉で表現しているだけであろう。
こういう類のものはシンプルな方が聞いた相手側が勝手に想像を膨らませてくれるものだ。
スポーツの世界も芸事も自信を持つことで余裕が生まれ幅ができるが、自信が過剰になって慢心するとダメになる。
何事も自信を持つということは大切なことだし、自信を持っても常に謙虚であれということなのだろう。
この当たり前のことが出来ないから凡人なのだ。これが出来る人が結局実績をあげていくことになるのだろう。