「武士の家計簿」を観て来た。
夫婦50歳割引で2人で2000円で2時間楽しめる映画は我が家にとっては嬉しくて安上がりな娯楽である。
このところ毎週の様に観に行っている。
観客席は8割方埋まっていたが、やはり時代劇は高齢者が多いようだ。
この「武士の家計簿」は江戸時代末の加賀藩が舞台である。加賀百万石前田家の御算用者(ごさんようもの)といわれる藩の経理を担当する武士の家系猪山家の八代目猪山直之が、逼迫した家計を立て直す物語で、実際に残されていた家計簿を元にしたノンフィクションだという。
時代劇だが、チャンバラシーンや戦闘シーンは皆無、算用者が主人公だけにソロバンで家庭の経済を立て直す話だ。
主人公の猪山直之は真面目で堅物なソロバンの達人で、偶然、藩の不正を発見してしまう。
不正を知っている者たちも、事を荒立てて悪事が露呈してしまうと、自分の立場が危うくなるので握りつぶそうとしたり、無視しようとする。
露見しては困る上司が、彼に調べさせることを止めさせようとして左遷しようとするが・・・。
時代が変わっても人間のやることに大差はないものである。
この猪山直之を演じているのが、堺雅人である。この人は、どんな役をやっても、何だかいつも微笑んでいるように見えてしまって、切迫感が感じられない。
映画「ゴールデンスランバー」の時には、冤罪なのに追われているという逼迫感が感じられずに、あまりハラハラドキドキしなかった。
だが、今回の映画では逆にそれが、何だか、飄々として対応しているようでほほえましく感じたのだから、今回の配役は成功しているかもしれない。
青臭い書生論を吐いて、世の中の悪を正すというよりも、自分の信じる道を、自分の方法で行うことに、恥ずかしさなど無いという強い信念を持って(飄々として)行動することで、道が拓けていくことが表現されている。
ノンフィクションということだから、いつの世も不正というものは長くは続かない、必ず良心のある人たちが立ち上がるということに希望が持てた映画であった。