これまでに長崎県と佐賀県の2県を除く45都道府県を訪れて講演をさせてもらった。
講演に呼ばれると、その場所の景勝地や名所にガイド付きで案内してくれるし、特産品や名物料理などをご馳走してくれる。
また、商店街や商工会などから呼ばれると、シャッター商店街(店舗が閉店してシャッターが降りたままの商店街のこと)や、郊外型のショッピングセンターなどにも案内して説明してくれる。
もちろん、たかだか数時間、その場所を訪れただけで、深部まで分かる訳がないが、観光で物見遊山で訪れるのとは違って、その地域の抱える問題点や長所、短所などが、観光よりは見え易いと思う。
だから、これまでに全国各地の「まちづくり」の成功事例やら失敗事例などを数多く見てきた。
失敗の原因は様々だが、成功の要因の第一は「リーダー」にあると感じている。
成功事例のほとんどが、熱烈な情熱を持ったリーダーに負うところが大きいと思うのだ。
それも、単なる強引で行動的なリーダーではなく、「ビジョン」を示すことが出来るリーダーが必須条件だと感じている。
ビジョンとは文字通り、全員に「映像」として将来図を見せられることを言う。何も映像と言っても、絵とビデオ映像とか具体的なことを言っているわけではない。それがあれば尚の事分かり易いだろうが、人々の頭の中に想像してもらうだけでも十分だと思っている。
「商店街」の再生は難しい。
世代間ギャップ(高齢者〜若者)(定年がないからかなりの年寄りが居る)が常に存在する組織であり、職種による考え方や顧客層の違いもある。皆が一国一城の主の集まりであるから意見がまとまり難いし、後継者の居る店と、居ない店の意識の差も大きい。
また、「土地持ち店持ち」・「土地借り店持ち」・「土地借り店借り」の意識の差も大きい。
だから、商店街をまとめているリーダーの苦労は並大抵ではない。
私の知っている商店街のリーダーの多くは身体(特に心労から胃を悪くする)を悪くしている人が多い。
日本は不況が20年以上も続いている。そこにデフレ基調が影響して利益の幅が極端に少なくなっている。更に、テレビショッピングやネットショッピングが隆盛になり、地元商店街は1975年あたりからズ〜ッとじり貧状態が続いている。
明確な将来ビジョンを持たなかった、若しくは持てなかった商店街はその場しのぎの小手先のイベントや改装を繰り返し、体力も金力も人力も失っているというのが現状だ。
未来を見通すことは難しい。明日、地震が起こるとか事故が起こるとかの予言は、超能力者でもない限り出来る訳はない。しかし、統計を見る(読む)ことが出来れば「予想」は可能なのだ。その最たるものが「少子高齢化」である。
統計上、少子高齢化が起こることは分かっていた筈なのに、誰も手を打とうとして来なかったのだ。現実化して初めてウロタエテいる。
しかし、私は「少子高齢化」は逆に中心市街にとってはチャンスだと考えている。
人口の塊である「団塊世代」は現在62歳以上になった。彼等は昔の老人と比べると見た目は10歳以上も若々しいから年寄りという感じがしないが、それでも、さすがに後10年もしたら彼等とて老ける。そうなると日本は見た目も急激に老人が増えることになる。
問題は「足」だ。足とは自動車や公共交通機関のことを言っている。
昨今、老人が運転する車の事故が多発している。高速道路を逆走したり、駐車場でアクセルとブレーキを踏み間違えて店舗に突っ込む事故のニュースが絶えない。これは極近い将来、大きな社会問題になるだろう。
テレビの自動車のコマーシャルで、自動車が勝手に判断して車にブレーキを掛けたり、渋滞で前の車に続いていく車を宣伝しているが、果たして老人が新しくそういう車を購入するだろうか?
もう一点、北海道は雪国である。今冬の日本海側の大雪を見たら、冬の除雪の問題も大きい。
また「無縁社会」も問題だ。独居老人が増えることが予測されている。
これらの事を考えたら、除雪の心配が少なく、歩いて買い物や病院に行くことができる中心市街地が有利になる。
私は十勝環境ラボラトリーの都市構想プロジェクトで13年前の1998年4月に、これらの予測をまとめて「帯広中心市街地活性化事業TMO提言書」というものを作成して、市役所や商工会議所や商店街で説明した。
しかし、まだ早過ぎたのか、誰も乗ってこなくて、この構想はお蔵入りし、その代りに出てきたのが「北の屋台」だったのである。
私は、この「提言書」を再度、帯広市民に問いたいと思う。