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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2011-04-12-Tuesday 読売風向計

読売新聞北海道版2011年4月7日掲載「風向計」

十勝の「十価値」を生かそう

私の暮らす十勝はポテンシャル(可能性)が高い場所だ。「とかち」をコンピュータで文字変換したら「十価値」と出たのをヒントに、十勝の10ヴァリュー(価値)を考えてみた。①青空、②カラッとした気候、③農産物、④畜産物(肉)、⑤乳製品、⑥海産物、⑦菓子、⑧モール温泉、⑨ばんえい競馬、⑩ジビエ(エゾ鹿肉など)。こうして並べてみると「食」に関係したものが多い。

帯広にはすでに「豚丼」という有名な「地域グルメ」が存在するし、全国的に有名な菓子店もある。ブランド化するにはうんちくやエピソードが重要だからいくつか紹介する。

六花亭と柳月は、共に本社を十勝に置く製菓業のライバル会社である。とかち帯広空港には「帯広みやげ名店会」という店舗があり、この2社と、竹屋・豆総・坂本(我が社)の5店で協同組合を組織し、32年以上も一緒に商売をしている。ライバル会社が同じ店舗で商売している珍しい事例だ。

カレーライス、パン、焼肉の3つは帯広市民のソウル(魂)フードと呼べる食べ物だ。それぞれ、インデアン、ますやパン、平和園の3店が昔から営業している。日本の名だたる同業の有名店が帯広に進出して来ても、帯広市民はこの3店から離れない。私も大学生時代、帯広に帰省したら、まずこの3店で食べたいと思ったものだった。

これまで十勝は、食糧生産地として主に原材料を供給してきたが、これからは加工していくことをもっと重視すべきだと思う。しかし、単に作った製品をお土産や商品として全国に売るよりは、十勝に来て食べてもらう方策を取ってもらいたい。

生産地でしか食べられず、流通にも乗せにくい食べ物がある。例えば、牛の初乳(子牛を生みたての親牛の乳は、一般に販売してはいけない法律がある)を捨てるのはモッタイナイからと、酪農家が保存用に作る「牛乳豆腐」。じゃがいもを大きくするために、間引く小芋(形が小さく丸いまま残るからシチューやカレーには最適な食材)は流通には乗せられない。

人間は食べなければ生きていけない動物であるが、食事を単にお腹を満たすだけの行為にしてしまうのはツマラナイ。人間は脳で食べているとも言われるから、楽しく食べることで美味しく感じる。

コミュニケーション豊かに、楽しく、美味しく食べられる場所、そこでしか味わえない食べ物を創ることが重要だ。地元住民と旅行者らが一緒に、一期一会で食べられる場所をつくろう。

(この原稿は3月8日に読売新聞に提出し、掲載予定日は3月12日であったが、東日本大震災の影響で4月7日の掲載になった)