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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2011-08-18-Thursday 大道芸フェスの感想

今年の「北の大地de大道芸フェスティバル」は

3日間の日程を終了したので、ここで今年の総括をしてみたい。

まずは芸人の選定からプロデュースまでお願いしている「ファニーボーンズ」がヨーロッパでの遠征公演の日程と重なったことで一時は開催そのものが休止の危機に陥ったが、彼らのマネージャーから社長業まで何でもやっている金丸雪菜さんが事前に手配を全て済ませていてくれて、しかも彼女はスイスから前日に戻ってきてくれて、仕切ってくれたので無事、開催に漕ぎつけることが出来た。ファニーボーンズもスイスから直接、成田ー新千歳ー帯広と乗り継いで駆けつけてくれて最終日16日には、時差ボケが取れない中、演技もやってくれた。

帯広の大道芸ファンにとってはファニーボーンズは無くてはならない存在になっているように感じる。まずは金丸さんとファニーボーンズには感謝したい。

例年、帯広の大道芸には、他所の大道芸フェス関係者がうらやましがるほどの一流の芸人たちが集まってくれるが、今年も素晴らしいパフォーマー達が来てくれた。

ここでエピソードを一つ紹介しておこう。

2日目15日のナイトパフォーマンスの照明係をやっていた私の横に、若い女性がビデオカメラとカメラを持った若い女性が近寄って来て、「隣で撮影させてもらっても構いませんか?」と聞くので「どうぞ」と場所を少し空けてあげたら、「私は沖縄から来たんです」と言うのである。「エッ、沖縄から?」。今年は沖縄から「だいち」と「マサトモジャ」の2人が参加しているから「彼らの追っかけなんですか?」と質問してみた。すると「いいえ、私は大道芸が大好きなんです。帯広の北の大地de大道芸フェスティバルはすごい芸人さん達が一堂に会するので是非とも見たいと思ってやって来ました。大道芸が大好きだからだいちさんは知っていますが、別に追っかけという訳ではありません」とも言う。

彼女は翌16日も私の横で撮影していた。「ユーチューブにでも流すんですか?」と聞いたら「いいえ、あくまでもわたしの趣味です」と答えた。ディープな観客がいるものだ。わざわざ、沖縄から帯広まで、大道芸フェスを見に来てくれる観客がいるとは嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。

さて、このブログでは一人一人の芸の内容を評価することはあえてしないが、かなり大きく分けると傾向が二つに分かれている様に感じた。

それは、予定調和的にプログラムを作り込んで見せるタイプと、逆に暴走的にその場その場の雰囲気でアドリブを入れながら見せるタイプの二種類である。大道芸はもちろんライブだからその中間型が一番多いのであるが・・・。

帯広の大道芸は今年で10年目であるし、最初から一流の芸人達のパフォーマンスしか見ていないから、観客の目は他の地域よりも肥えていると思いたいが・・・。

今年の帯広の観客は総じて、予定調和的な芸風を好むのではないかと感じたのだ。

テレビドラマで言えば「水戸黄門」的な勧善懲悪の、最初から筋書きが決まっていて安心して見ていられる芸風である。

きっと心の安定を求めているのだろうと思う。

あぁ、でもそれなのに水戸黄門は今年で打ち切りになるという。なんという皮肉な事態なのだろう。テレビマンはライブ感覚を喪失してしまったのか?・・・

もっと解り易くテレビ番組で例を挙げれば、かつての土曜日の晩の「ドリフターズの8時だよ!全員集合」である。しっかりとした台本があって、それを何度も何度も練習を繰り返してから本番の生放送に臨むのである。

一方の暴走型の方は、ハプニングで何が起こるか分からないから心の安定を得られずに不安な心理状態に陥ってしまう反面、その何が起こるか予測出来ないという楽しさを重視する芸風だ。「全員集合!」に対する「俺たちひょうきん族」のような感じだろうか?と推察する(比較が古過ぎて若い人には判らないかな)。

今年の大道芸フェスティバルは、総じて観客の乗りのタイミングが去年よりもワンテンポずつ遅かったように感じた。

私だけの感想かと思ったら、芸人側からの感想でも似たようなものだったから、きっと、全体的にそうだったのだろう。

それには恐らく何等かの形で、東日本大震災の影響があったのではないだろうかと推察している。

笑いの質が、震災前と後とでは微妙に違っているように感じるのだ。

地震(津波)はある日突然襲って来て、2万人以上もの人命を奪って行った。日本人が受けた心の傷は深いだろう。それが少なからず影響しているのではないだろうか?

だから、特にシュールな芸風や暴走系があまり受けなかったように思う。人間の心理の中に「心の安定」や「安心」を求める部分が増えているのだろう。

地震の様に、ある日突然に訪れる天災に対しての、脳の防衛本能が働いたのではないのだろうか?

観客は最初から最後まで安心して、心を乱されない芸風を知らず知らずの内に選択していたのかも知れない。

3日間の雨という事態があって、パフォーマンスの機会は大幅に縮小せざるを得なかった。だから「投げ銭」の総量が少なかったのは理解できるとしても、一回のパフォーマンスに対する投げ銭の金額が去年までよりもかなり減少しているのだ。この理由は直ちに解明する必要がある。

芸人さんは基本的に投げ銭で生活しているわけだから、投げ銭の金額が集まらないフェスティバルには、(他に芸人さんを喜ばせる要素でもない限り)招聘することが難しくなる。

この投げ銭の金額の減少という事象は、帯広市民が大道芸に飽きてしまったのか、それとも、感動の対価としてこの程度の金額で十分だと判断したのか、はたまた、大震災の影響なのか?・・・・

来年の開催に向けて色々な課題が出てきたと感じている。でもこれは10年目を機会に大きく進歩するチャンスなのではないだろうかと受けとめている