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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2011-08-27-Saturday マイヒストリー65

布目師のマジックショップの壁には

「力書房」という出版社が発行していた季刊誌の「奇術研究」(昭和31年4月1日第1巻発行—昭和54年4月20日第86号で廃刊)というマジックの専門誌がビニール袋に入れられて壁一面に張られていた。ディスプレイを兼ねた演出だったのだろう。

この本の存在は高校生の時にこの店を訪ねた時に知ったが、帯広での購入方法が判らなかった。大学に入ってから布目師に教えてもらった祖師谷大蔵にあった力書房を訪ねてから在庫が少ない号から徐々に買い集めるようになっていったのである。それでもすでに売り切れになっている号が沢山あって、なかなか全巻が揃わない。薄い本なので古本屋で探すのもなかなか骨の折れる作業だったのだ。この力書房という会社は大学4年生の時に廃業してしまったので全巻揃ったのは大学を卒業してからであった。

もう一人の師匠のジミー忍師もマジック関係の書籍を蒐集しておられた。師の自宅に行っては珍しい本を読ませてもらっていたが、中でもとても欲しかった本が「奇術随筆(阿部徳蔵著・人文書院刊・昭和11年5月5日発行)」という本で、函に入った280ページの重厚な本なのだ。

東京中の古本屋を探したが見つからなかったが、大学4年生のゴールデンウィークに京都に行く機会があった。大学1年生の時にニュージーランドの交換留学生で一緒に行った連中が同窓会を京都で開催するので参加しないかとの要請が来たから、それに便乗して、高校の同級生で京都の大学に入学した奴の下宿に転がり込んで京都・奈良の見学をしようと思ったのである。高校の修学旅行で京都・奈良には行っているが、良く見ていなかったのでもう一度ゆっくり訪ねたかったのだ。

その高校の同級生の大畑君と京都市河原町にある「書籍会館」という古本屋に入った時(旅先でも古本屋を見かけると入りたくなる性分なのである)にこの本の背表紙が私に買ってくれとせがんでいるように、スッと目に入ってきたのであった。

価格は5千円であったが、函も中身もまったく痛んでいない完璧な状態である。だが、旅先で、しかも学生の貧乏旅行で5千円はきつい。とりあえず大畑君から足りない分を借りて購入し、また例の如く母親にせがんだのだった。手に入れてからは嬉しくて嬉しくてしばらく興奮していたことを鮮明に覚えている。

このように古本というのは、探し回る楽しさや、どこで手に入れたのかということも重要な要素になるのだ。今日のようにネットオークションで簡単に手に入るのは最初こそ、コレクションが増えるからと喜んでいたのだが、慣れてくると段々とつまらなくなってくるものだ。何だが思い入れが少なくなる分、喜びも少なくなるようである。(つづく)