「鉄の女」と言われたマーガレット・サッチャーが8日87歳で亡くなった。
彼女の評価は現在でも二分しているが、私は個人的には好きな人物であった。
政策は市場原理を重視して小さな政府を目指し「ゆりかごから墓場まで」と言われていたイギリスの福祉に大ナタを振るい。国営企業を民営化して労働組合のストライキを抑え込み、「英国病」と揶揄されていた停滞していたイギリスの経済を活性化し、大幅な金融制度の自由化を断行した彼女の政策は「サッチャリズム」とも呼ばれた。アルゼンチンとの間のフォークランド戦争というのも傍で見ているとかなり過激に見えたが、日本が竹島や尖閣諸島問題で動けないのとは、良い悪いは別にして対照的な決断である。
サッチャーの評価が二分するのは、彼女の政策によってイギリス国民が強者と弱者に二分されたからであろう。
今日の日本の状況と重ね合わせてみると実に面白い。
問題は、彼女がここまで徹底した政策を取らざるを得なかった、あの当時のイギリスの切羽詰まった状況にあったと言っていいだろう。
本来、政策は急激な変化よりも緩やかな方が良いに決まっている。国民が知らない内に善政を施してくれるのが理想なのだ。しかし、政治家は先延ばしに先延ばしを続けていくものだから、結局は切羽詰まってしまって、どうしようもない状況に陥ってからはじめて政策の変更をするので、急激な変化になってしまい国民は困惑してしまうのである。つまりは政治家の怠慢が招いた危機なのだ。
サッチャーは男の政治家では変えることの出来なかった状況を変える為に出現した女性であり、さしずめイギリス版のジャンヌ・ダルクであろう。
清廉潔白で、大衆迎合しない信念を持ち、特別扱いを嫌ったサッチャーのような政治家が日本にも現れて欲しいものだ。