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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2015-02-18-Wednesday 人口減少社会への対応

昨年、元総務大臣の増田寛也氏が座長を務めた

日本創成会議が「2040年までに日本全国の市町村の半数が消滅する」という、いわゆる増田リポートを発表し、全国にショックを与えた。「消滅」と言っても、地方自治体としての「行政サービス」が立ち行かなくなるという意味での「地方消滅」という表現ではあったのだが・・・。

帯広市の例を具体的な数字を挙げて表わしてみると、2010年の人口は約16万8000人、うち65歳以上の老齢人口は22%の約3万7000人である。これが2040年には人口は13万1000人、老齢人口は約40%の約5万2000人になると予想されている。人口が約3万7000人も減少するのに、老齢人口は逆に1万5000人も増えることになるのだ。5人に2人が老人ということである。

65歳というのは定年を迎えている年代であるから、生産性はないということだ。不動産や株などを所有している老人が資産運用で稼ぐという人も居るが、労働の対価に依って収入を得る人は極々少人数ということだ。つまり、年金などの国からのお金だけで生活する人が増えるということだ。更に、そこにもってきて、医療費、介護費などの支出が大幅に増えることになる。

それでも、若い年代の人口が増えていて、ガンガン働いて稼げば何とか賄えるかもしれないが、逆に、若年人口は益々減少する傾向にある。支出が収入を大幅に上回る慢性的な赤字状態になるということが歴然としているのだ。

少子高齢化の到来はデータ上から1990年代には言われてきたことだが、これまで何らの対策も取ってこなかった。

私が出席していた1990年代に開催された、とある会議で、私が「これからは帯広市の人口も減るのだから、人口が減ることを想定したまちづくりのプランを作らなければ、計画と現実とのギャップが大きくなって計画自体が意味のないものになってしまうのではないか・・・」という趣旨の発言をしたら、「人口が減るなんて縁起の悪いことを言ってはいけない」なんていう言霊(ことだま)発言を云う人間が居た。しかも、この人の意見に多くの出席者が同調するのだから呆れてしまって、この会議ではまちづくりは出来ないなと判断して脱退したのだが、こんなバカな意見が大手を振ってまかり通っていた時代だったのだ。これはついこの間まで続いていた傾向である。「地方消滅」が去年、世に出て、世の大勢がようやく人口減少の危機を認識し出してから、いよいよ人口減少の大変さが理解されだした。こんな20年も前から分かりきっていることにも対処しないから対策が後手に回るのだ。

少子化問題の解決、すなわち出生数の増加には長い年月が必要だ。効果が現れるのには20年近くもの時間が必要だからだ。いくら国が「産めよ、増やせよ」と掛け声を張り上げたところで、現代の女性が子どもを産もうと思うだろうか。

現代の若者は、年功序列型の安定した収入が見込めない非正規雇用、年金だってまともにもらえるかも分からない、将来に対する明るい希望がまったく見えず、不安だけを増幅させる政治の貧困さに、若い人たちは絶望感すら抱いているのではないだろうか。

地方自治体が行う「行政サービス」の原資は「市町村民税」と「固定資産税」が中心である。人口が減れば住民税は当然減少する。固定資産税も一番高い中心部の虫食い状態を放置すれば下落する。街を漫然と広げていけば、やがて道路、橋、上下水道などのインフラの補修管理の費用が捻出できなくなり、街は荒れてしまうだろう。かつて田中角栄首相が唱えた列島改造論の「国土の均衡ある発展」はもはや完全に時代遅れの政策になった。どこもかしこも整備された都会である必要はないのだし、そんな金は国にもない。

地方の自治体ができることは、「メリハリ」をつけることであろう。防災上の観点からも、開発してはいけなかった場所まで開発して街を広げ過ぎてしまったのだ。

私は、1995年に青年会議所で視察に行ったアメリカのコロラド州のボウルダー市を参考にしたら良いと考えている。

ボウルダー市はコロラド州立大学を中心にした街で、帯広市の「帯広の森」と似たような「オープンスペース」と云う土地で街をぐるりと囲っている。街をこのオープンスペース以上は広げないという「成長限界線」なのだ。

このオープンスペースと街の中心部との間にも、日本の市街化調整区域の様な住宅を建てられない地域がある。この地域の開発は、街の中心部に空地が有ったら一切認められないのだ。市街地を虫食い状態にしないための政策である。ただし、アメリカは自由の国だから、どうしてもここに家を建てたければ、上下水道、電気、ガス、道路などのインフラを全て自己責任で作り、管理するならば家を建てることもできるらしい。行政の税金は一切使わないということだ。

人口が減るのに、まだ、ドンドンと街を広げている帯広市、帯広は冬には雪も降るのだ。除雪の費用だってバカにならないだろう。人口減少社会をもっと真剣に考えなくてはならない。