どうやら、大道芸に対するバッシングの主な原因が、思い込みにあるような気がしてきた。
大道芸に無理解なまつり関係者の方々には、どうも『大道芸人は「投げ銭」の収入だけで出演する』と云う思い込みがあるようなのだ。
また、大道芸人をテレビに出ている芸能人よりも一段低くみている傾向もみてとれる。
それがつまりは、大道芸人にはギャランティが不要だという認識になるようなのである。
確かに、この大道芸を始めた頃の2002年当時は、ギャラ無しの大道芸人が居たのは事実である。
しかし、大道芸のフェスティバルが全国各地で開催されるようになってくると、大道芸人のポジションが上がり、客を呼べる芸人や、客を湧かせる芸人の誘致合戦が始まったのである。
テレビに出ている芸の無いタレントなんかより、日々、異なる場所や環境で演技し、他に目的を持っているであろう道行く人々の足を止めさせて観客にしてしまう大道芸人の方が遥かに芸が達者なのは云うまでもないことである。
大道芸フェスティバルで街を活性化させたい所は、余所の大道芸フェスティバルとの差別化を図る為に、一流の芸人を大勢揃えたいと、どこのフェスティバル運営者も芸人との事前の交渉が激しさを増す。
そうなると、ギャラが発生してくるのは当然の成り行きであろう。ランクが上位の芸人のギャラが高騰するのは自然の成り行きである。
そんな中で帯広の「北の大地de大道芸フェスティバル」では、大道芸人の選出から出演交渉までの全てを芸人仲間でもある金丸雪菜プロデュサーがやってくれる。だから一流の芸人たちが仲間意識で出演してくれるのだ。
ただ、帯広は東京から遠く離れた場所にあると云うデメリットを抱えている。
分かり易く例を取って説明しよう。東京在住の芸人が関東近郊の都市で開催される大道芸フェスティバルに参加するとしよう。
当日の早朝に自宅を出れば会場には十分に間に合う。終了後もそのまま自宅に戻ることが可能だ。
これと比較して帯広の場合は、距離があるから前日泊が必要になるし、終了後も帰りの交通手段がないから翌日の帰宅になる。
つまり前後2日の余分な移動日程が必要になるわけである。この余分な移動日には演技をするわけではないから当然ながら収入はない。
大道芸は屋根の掛かっていない外で演技をするから「天候」「季節」に大きく左右されるし、演技できるのは、ほとんどが土・日・祭日に限られる。真冬は休業状態である。
つまり稼げる夏の土日祝祭日に、しっかりと稼いでおかなければならないのだ。
帯広の平原まつりの期間は、お盆であり、この時期は大道芸の一番の稼ぎ時なのである。
その一番の稼ぎ時に、前後の2日間の無駄な移動時間を使わせて、遠い帯広に来てもらうのだ。
帯広に来たのは良いけれど、もしも雨が降ったら、どうなるのかを想像してみてほしい。演技が出来なければ当然「投げ銭」は集まらない。
遠い北海道の帯広に2日余分に時間を掛けて来て、天候に恵まれなかったら、稼ぎはゼロになる危険性がある。
はたして人間として、アーティストにそんなリスクを負わせての招聘が出来るだろうか?
招聘する側としては、せめてギャラを払って、少なくともそのリスクを最小限にしてあげることがアーティスト招致の礼儀ではないかと心得る。
ここのところの理解が全くされていないのではないだろうか?
帯広の大道芸フェスティバルは、芸人にとっても、観客にとっても、招致する側にとっても、三方良しの稀有なフェスティバルになっている。
余所のフェスティバルとは一味も二味も異なる運営方法なのだ。
後は補助金を出す側の、まつり関係者側の理解さえあれば、もっと素晴らしい大道芸フェスティバルになるのだ。
まずは、何とか、この辺りの誤解を解く説明を丁寧にしていこうと思っている。