それはタイの景気の良さである。
「景気」とはすなわち「気」である。人々の気分によって大きく左右されるものだ。だから、必ずしも実態を表わしているとは限らないが・・・。
タイの景気は「今日よりも明日の方が良くなる」という「気」によって醸成されているように感じた。今日よりも明日の方が発展しているという気分である。だから先行投資で国民も金を使う。
その「気」がどこから来ているのだろうか?
9年前の2007年に上海を訪れた時にも、今回のバンコクのような「気」を感じたが・・・。
タイの好景気の原因は、恐らくは、その中国経済の衰退ではなかろうか?
9年前の中国は安い労働力によって「世界の工場」として、世界中の企業が進出し発展をしていた最中であった。
この時の中国は、まさに「今日よりも明日の方が良くなる」と云う気分に満たされていたように思う。
今回のバンコクと似た様な雰囲気であった。
この9年間で中国が急激に発展し、労働者の賃金が高騰してくると、採算が合わなくなった海外企業は、より安い賃金で働いてくれる国に工場を移動していく。その国のひとつがタイなのであろう。
生き残りをかけて、中国に見切りをつけて、他の国に工場を移動する企業は、まだ体力のある企業である。
経済発展を見越して、先行投資して工場を建てた中国人の企業家は、移動したくても、なかなか移動することが出来ないのであろう。
最近の中国の倒産事情をみると、バラ色の未来を夢見過ぎての、無謀であったり、無茶であったりな先行投資や過剰投資が多かったように感じる。
ここに来て中国政府は、国民への人気取り政策なのか、更なる労働者の賃金アップを求めている。
恐らく、この政策は、海外企業の中国離れを加速させてしまうであろうと思われる。
その中国離れの受け皿のひとつがタイなのであろう。タイは仏教国で、相手に対する感謝の気持ちを持った真面目な国民性を持っていると思われる。
おそらく、真面目に働き、手先も器用なのではなかろうかと思う。
しかし、タイとて安泰ではないだろう。
このグローバル化と云う経済体勢は、より安い賃金を求めて移動して歩く宿命だからだ。タイの次には、ミャンマーやカンボジアなどが待っているだろう。
安い労働賃金故に、世界の工場が集まり、国が発展する。
発展すれば、労働賃金が上がり、国民が豊かになる。
労働賃金が上がり過ぎると、工場が他の国に移動してしまう。
発展が終わり景気が悪くなる。
何とも罪作りなジレンマである。
この成長する期間がゆったりとしたものなら、まだ国民全体にまで恩恵があるかもしれないが、急激な発展は、一部の金持ちを作り出すだけで、国民全部が豊かになる前に終息してしまう。つまり格差を生み出すだけだ。
しかも、この成り金連中は、バブルの様なお金の使い方をして、結局は破綻してしまうことが多いのではないだろうか。
どうも、今の中国を見ていると、バブルがはじける前の日本の狂騒に似ているように感じてしまう。
タイの発展が、いったいどのくらいの期間をかけておこなわれるのだろうか?
急がずにゆっくりとやった方が良いとは思うけれど・・・。