旅館の朝食はとても豪勢なメニューで、小食の坂本家ではとても食べ切れない品数と量である。
普段はミルクティとヨーグルトくらいしか食べていないから胃袋がビックリしている。バイキングで好きなものだけ取って来て食べる方が我が家には合っているようだ。
高山駅まで旅館の車で送ってもらう。9:38発のひだ6号で名古屋に向かうが、12:02着の名古屋では、JRから近鉄に乗り換えて伊勢市に向かうスケジュールになっている。
妻が作ったこのプランでは、乗り換え時間がわずか8分間しかないのである。慣れた駅や小さな駅なら8分間でも余裕であろうが、名古屋みたいなデカい駅で、しかも会社が異なっていて、JRと近鉄なのである。土地勘がないから移動時間が読めない。電車は遅くなることはあっても、早く着くことはあり得ない。
車中で車掌に、近鉄に乗り換えるには何号車で降りて、どの方向に行けば早いかを尋ねた。
先頭車両から降りて、進行方向に向かうと、すぐに近鉄の改札口があると教えてくれたので、到着5分前に乗っていた2号車から先頭の10号車まで車内を移動したのである。少しでも駅構内での移動時間を短縮するためだ。
さぁ、後3分で名古屋駅に到着すると云う車内アナウンスがあった途端に急停車した。原因は信号の異常音云々と云う。結局、列車は10分遅れで名古屋駅に到着、近鉄の改札口は確かに目の前で1分も掛からなかったが・・・、列車は発車した後なのであった。
北海道と違って、私鉄も本数が多いから助かる。40分後の列車に乗ることが出来たのであった。
モノは考え様である。車内販売が無いから、このまま近鉄に乗っていたら昼食抜きであった。逆に40分の時間があったことで駅弁を買うことが出来たのであった。
伊勢市駅に14:11に到着、コインロッカーに荷物を預けて伊勢神宮の外宮を参拝する。
私は外宮にお参りするのは初めてである。
昨日の情報では、この3連休の伊勢神宮の混み具合はスゴイと聞いていたのだが、思ったほどではなかった。1時間ほどで、正宮・多賀宮・土宮・風宮と順番にお参りすることが出来た。
「式年遷宮記念せんぐう館」と云う博物館のようなものが外宮敷地内の匂玉池のほとりに建てられたと云うのでここを見学したが、最近、私は日本古代史に興味を持っているのでとても勉強になった。
旅館に行くにはまだ早いので、伊勢駅近くにある別宮の「月夜見宮」に参拝する。ここはイザナギノミコトの禊から誕生した三貴神の一人「月夜見尊(つきよみのみこと)」を祀ってあるところだ。
このツキヨミノミコトは、神話でもほとんど登場しない神さまで非常に影が薄い。行ってみて驚いた。なんと参道が直角に折れ曲がっているではないか。
これは「怨霊」を閉じ込める神社の造り方である。罪が無いのに陥れられて、恨みを抱いて憤死したから怨霊になる。陥れた方の人間には負い目があるから怨霊に成らぬようにと神として神社に祀るのである。
怨霊は真っすぐにしか進めないと信じられていたから、怨霊を神社に祀り閉じ込めておくためには参道を直角に曲げて造るのである。だから、逆に言えば、直角に曲がる参道の神社に祀られているのは怨霊ということになるのだ。
神話にもほとんど登場しないから、この神様がなぜに怨霊なのかは知らないが、行ってみて初めて分かることもあるんだなぁ〜。
伊勢駅前からタクシーで旅館「京平荘」に向かう。ここは料亭旅館で部屋数は5部屋しかなく、料理が有名な宿である。
部屋毎が独立した造りになっているから、隣の部屋の音は聞こえないようになっていて静かに過ごせる。
料理は、昨晩の旅館と同じに、品数も量も多い。ここでも事前に息子の甲殻類(エビ・カニなど)アレルギーを伝えてあるから、息子だけ料理が若干異なるのだが、伊勢に来たのに「伊勢海老」を食べられないとは不幸な奴である。
食事はとても豪勢で、どれも美味しいが、やっぱり坂本家の小さな胃袋には合わない。メインディッシュはA5ランクの松坂牛のステーキであったがここに辿り着く前に満腹になってしまったのだった。
この旅館には大浴場がなく、部屋の風呂に入るのだが、4人だと時間が掛かる。
普段はほとんど歩かないから、歩き疲れて風呂を出たらすぐに眠ってしまったのだった。(つづく)