「癌粒子線治療」
前回11月27日の当欄に、私が癌(がん)に罹(かか)って先進治療の「粒子線(陽子線)治療」を受けたことを書いたところ、読者の方から詳しく教えて欲しいとの連絡を多数いただいたが、この「粒子線治療」に関しては、今年になって状況が大きく変化した。
今年の4月から、「前立腺癌」と「頭頸部(とうけいぶ)の癌の一部」に公的医療保険が適用されることになったのである。
1月17日に開催された厚労相の諮問機関である「中央社会保険医療協議会」で了承された。
私の場合は生命保険会社の「先進医療特約」に加入していたので自己負担額はゼロ円であったのだが、公的医療保険が適用されないと自己負担額が300万円ほども掛かる治療法なのである。
2016年にも公的医療保険の適用が検討されたのだが「他の治療法に比べて優位性が認められない」として見送られた経緯があったのだという。
私が治療を受けた「前立腺癌」は、粒子線治療を受ける患者数が年間1700人と最も多いが、今回の公的保険適用認定には、最新の治療実績やデータを踏まえた結果が評価されて対象になったのだという。
私もデータ提供にサインをしたのだが、全国からの治療データの集積によって、粒子線治療の有効性が認められ、上記の癌には保険適用がされることになったのである。同病で苦しんでいて、この治療を希望しながらも費用的な面で断念をしていた患者に取っては朗報であろう。私も少しはお役に立てたのかもしれない。
粒子線治療とは、原子核を巨大な加速器で光速の70%程度(60〜80%)にまでに加速させ、癌細胞に対してピンポイントで照射し、癌細胞だけを殺すという治療法で、私の場合は30回の照射を受けたが、1回の治療時間は20分程度と短時間で済むし痛みも全くない。副作用や後遺症が少ないのも特徴である。
使用する原子核が、炭素イオンならば「重粒子線」、水素イオンならば「陽子線」という2種類があり、治療施設は日本全国には「重粒子線」5ヵ所、「陽子線」13ヵ所がある。
北海道には、札幌の北大病院と禎心会病院の2ヵ所に「陽子線」の治療施設があるだけで、私は北大病院に2ヶ月間入院して治療を受けた。
札幌近郊在住の患者ならば仕事の合間での通院治療が可能である。ただし、陽子線治療は継続して数十回の照射が必要なので、帯広のような遠隔地では通院での治療は難しい。癌治療は日進月歩であるが、まだまだ距離的・時間的な問題が残っている。