訪問して下さった島田晴夫さんから、貴重なお話をたくさん聞けた。
特に、15歳でマジックに目覚め、16歳での八つ玉でのデヴューの話しはとても面白かった。
本番3週間前に、左利きの石田天海師から「左手でもやってごらんなさい」と言われたのだという。
当時は左ギッチョ(左利きを島田さんはこう表現されていた)は右利きに矯正されたもんだったし、左手を使うのは忌み嫌われていた風潮があったから、左手を使おうと云うのは考えてもみなかったそうだ。
2階の窓から身を乗り出して練習したのだと云う。玉を落としたら階下まで拾いに行かなくてはならない。その緊張感のもとで練習をしたのだと云う。
その玉の手順を目の前で実演してくださったのだが・・・。
私が用意したのは、MC社製の中空40mmボールでシェルが木製であったが・・・。
島田さんが使っているのはテンヨー製のボール(40mmよりも小ぶり)でシェルは金属性だと云うのである。これまで何度もビデオで島田さんのビリヤードボールの演技を見ているのだが、大きく見えたので、私はてっきり40mmボールだと思い込んでいたのだ。
そのことを言うと、笑って、「手の形をこう小さくすると・・・」と実演して見せてくれたのだが、確かに手を小さく見せると相対的にボールが大きく見えると云う手法である。「これも一種のイリュージョンですよ」と島田さん。
さすが、こんな細かいところにまで気を配っておられたのだなぁ〜。
島田さんは、観客から「素晴らしい!」と言われるのは嬉しいが「上手いですね」と言われるのは好きではないと云う。テクニックを褒められるよりもキャラクターを褒められたい。それはキャラクターは唯一無二のものだからだと云う。
だから、フラリッシュを観客に見せつける様な演技はやらないのだと云う。
それはマジックを演じているというよりも、ジャグリングを演じている様なものだからだと云う。
マジックは元々不思議さを見せるものであるのだから「不思議ですね」と言われるのは、観客の意識が、まだマジックの「種」の方に向いている証拠であり、演技全体を見ているわけではないから、それも良くないのだという。エンターテイナーとして、観客に感動を与えたいのだと云う。
島田さんはマジックを他人に指導することにはまったく抵抗は無いと云う。いくらやり方を教えても島田晴夫は唯一無二のキャラクターだからなのだと云うのだ。ウ〜ン、なるほど!深いなぁ〜!
その話を聞いていて、畏れ多いが、私が作った「北の屋台」のコンセプトと同じだとフッと感じた。屋台も店主のキャラクターが重要で、屋台のやり方を他の地域の人に指導しても北の屋台と同じモノには絶対にならないからだ。屋台とフードコートとの差がここにあるのである。
そうか!やはり私のマジック的思考法は合っていたんだなぁ〜。思わず嬉しくなった瞬間であった。