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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2021-05-27-Thursday 見世物小屋

「見世物小屋」

私が子供の頃の西3条南9丁目の一画は「裁判所跡地」と呼ばれる草地であった。『昭和50(1975)年にイトーヨーカドー北海道1号店や北海道銀行・商工会議所・バスターミナルなどが建ったが、平成10(1998)年にイトーヨーカドーは日甜跡地に移転。その後長らく空ビルになっていたが平成30(2018)年3月に解体され、現在はタワーマンションや北海道銀行・商工会議所などの新しいビルが建っている場所である』

この草地は2丁分(約100m×100m)を合わせた広さであったから野球も4面以上が取れたのである。この草地には、見世物小屋やサーカスやお化け屋敷などの小屋掛け興行がよく掛かったのであった。

我が家からは30mほどしか離れていなかったので、見世物小屋が掛かるときには、小屋掛けの様子から見に行った。丸太を荒縄で結んで組み立てていくのであるが、この作業を見るのが面白かった。小屋とは言うがかなり大きな建物なのである。それがわずか2〜3日で出来てしまうのだ。この小屋が出来あがっていく様子を見るだけでもワクワクしたものだった。

(この仮設興行を専門用語では「たかもの」と呼ぶ)

「見世物を見に行きたいから連れてって!」と親に頼んでも「あんなインチキなものバカバカしいからダメだ!」とまったく取り合ってくれない。しかし、子どもの好奇心は見たくて見たくて仕方がないのだ。またそう云う巧な演出なのである。

当時の帯広は娯楽が少なかったからなのだろうか?小屋の前は子供だけではなく老若男女でものすごい人だかりになっている。こんなに帯広市に人が住んでいたのであろうか?

オドロオドロシイ絵看板が怖いもの見たさの好奇心を誘う。呼び込みのおばちゃんがダミ声でテンポの良い啖呵(タンカ)でもって「親の因果が子に報い〜・・・」と因果モノと呼ばれる「蛇女」や「蛸女」などの口上で盛り上げる。「ハイ、坊ちゃん、嬢ちゃん、お代は見てのおかえりだよ!さぁ〜入った、入った・・・」と急き立てて言う、入り口ではお金を払わせる手間を掛けさせないのが手口なのである。大勢のお客さんたちがドンドンと中に入っていくので、それに押されて中に入ってしまった。シメタ!タダで見られるかも・・・と思ったのだが、出口では怖い顔したお兄さんがシッカリと木戸銭を徴収する仕組みだったのである。

金額の記憶は薄いのだが、木戸銭はたしか小人でも30円くらいはしたのではないかと思う。10円では足りなかったような記憶があるからなぁ〜・・・。それとも、「お祭り」の日と重なっていたのかもしれないなぁ〜。それなら人がやたらと多かったのもうなずけるし、お小遣いを多く持っていたのもうなずけるから・・・。

見世物の多くは親の言う通リにインチキなモノであった。「大イタチ」なんてのは最悪で、大きな板に血が付いているだけ。

「蜘蛛女」は黒い幕に蜘蛛の胴や足が刺繍みたいなもので描かれていて人間が顔を出しているだけ。同じインチキモノを見るのは一回こっきりだけではあるが、新しい見世物が来ると懲りずに見に行っていた。

唯一、私が2回見に行ったのは「人間ポンプ」と云う見世物であった。

碁石・コイン・ナイフ・剃刀・金魚など色々なモノを飲み込んでは吐き出す芸なのであるが、碁石の白と黒をお腹の中で色分けて出したり、穴の開いた50円玉2枚と鎖を飲み込み、お金の穴に鎖を通して出したり、腹に飲み込んだ金魚を釣り竿の針の付いた糸を飲み込んで、腹から金魚を釣り出したりする。手品を研究している今考えてみても不思議な芸なのである。最後には油(芸人はガソリンと言っていたが・・・)を口に含んで火の付いた棒に吹きかけて炎を大きくする芸が、ゴジラみたいでカッコイイなぁと思ったのであった。この芸だけはもう一度見たいと思わせてくれた芸であった。

感動した私は、食べたモノを吐き戻す練習をして、遂に習得をしたのであった。

因みに「人間ポンプ」には安田里美と園部志郎の2人が居るが、私が見たのは安田里美の方である。

(つづく)