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観光カリスマ
坂本和昭のブログ


■2021-08-23-Monday 勝毎「論壇」掲載記事

2021.08.23十勝毎日新聞「論壇」掲載記事

「縮小の国 日本」

韓国のイー・オリョン著の『「縮み」志向の日本人(1982年刊)』によると、日本人の性向は何でも「縮め」てしまうことにあると言う。扇子、折り畳み傘、トランジスタ、ウォークマン、電卓、盆栽、茶室、俳句、略語等々を例に挙げているが、なぜ「縮み志向」になったかは定かにしていない。

作家の竹村公太郎は、その理由を「江戸時代の大名行列」にあると言う。徳川幕府は参勤交代にも馬車や牛車を使うことを許さなかった。荷物はすべて足軽たちが背負って歩いていた。命の危険もある身体への負担を軽減するには荷物を「いかに小さく軽く」するかにかかっていた。同じ移動でも「車(輪)」などを使用する人々にはそんな考えは湧かない。細工して細かくし、凝縮して小さく詰め込む。細工しないものは「不細工」と非難し、詰め込まない人は「詰まらない奴」と侮辱され、美意識や道徳にまでなっていったと言う。

ここ10年を顧みても、東日本大震災などの災害の復興費用、コロナ禍での支援金などの財政出動、そこにさらに今回の東京五輪の巨額の赤字が積み上がる。政府には莫大(ばくだい)な借金が圧し掛かっている。

かつての「国土の均衡ある発展」なんてスローガンはもはや絵空事だ。人口が増えていた時代に郊外に拡張した新興住宅地も、偏った若い世代ばかりが大挙して集まったので新造した学校もやがて生徒がいなくなって廃校の運命だ。上下水道、道路、橋などのインフラにも寿命がある。メンテナンスだけでも費用が嵩むのに、造り替えともなると費用は莫大だ。冬には雪が降る。道路の除雪費用もかさむが、空き地や空き家前の歩道の除雪は誰がするのであろうか?

札幌一極集中が叫ばれて久しいが、その札幌でさえ数年後からは人口減少が始まると予測されている。高度経済成長時代の拡大路線から、少子高齢化の縮小路線に頭を切り替える必要がある。

ここは、日本人の特性である「縮み志向」を活用することだ。1996年に十勝環境ラボラトリーが提言した「コンパクトシティ構想」は手前味噌ながらよくできたプランであった。「北の屋台」はここから派生した事業である。中心部から無駄な空き地をなくしてギュッとまとまり、移動には公共交通機関を利用、年齢構成などバランス重視で暮らすこと等々を提言している。学校・病院・商店、交通機関などの運営には、ある程度のまとまった人口が必要である。コロナ禍を契機として長期的なまちづくりプランを再考してみてはどうだろうか。