「歴史探偵」(江戸マジックショー)と云う番組で、世界のマジック界にとっても大変な大発見の発表がなされた。
それは江戸時代の天保8(1837)年に出版された「名陽見聞図絵」と云う尾張藩士が名古屋周辺の風俗のことを書いた本の中に「水中脱出マジック」の「水がらくり桶ぬけ」という手品を演じている場面が絵入りで紹介されていたことを、河合勝(マジック研究家)さんが発見したというニュースであった。
河合勝さんとはメールを交わし合う仲なのであるが、このことはテレビで初めて知った。テレビの中でも発見したばかりであると言っていた。
「名陽見聞図絵」と云う江戸時代の和本は、いわゆる手品の解説本ではない。名古屋近辺の風俗を見聞きした尾張藩士が、その見聞した風俗の内容を紹介した本である。手妻師が水をいっぱいに入れた桶の中に入り、上から蓋をして紐を掛けて出られなくする。その桶に幕を被せると、桶の状態はそのままで手妻師だけが桶の中から脱出することが絵と文章で描かれていた。これは、まさしく、現代でも行われている水中脱出マジックと同じ現象の演じ方である。
「名陽見聞図絵」という本は「公益財団法人 東洋文庫(東京都文京区)」の所蔵と表記されていたから、マジック本の蒐集家である河合勝さんもこの本の存在自体をこれまで知らなかったのであろう。
世界のマジック界では、これまでは、世界で初めて水中脱出マジックを演じたのはアメリカのマジシャンで脱出王と呼ばれたハリー・フーディーニ(1874~1926)であると言われてきた。そのフーディニが水中脱出マジックの「ミルク缶からの脱出」というのを演じたのは1908年のことである。
名陽見聞図絵が出版されたのは1837年のことであるから、その作者が「水がらくり桶ぬけ」を見たのは当然出版以前のことになる。つまり、これまで世界初の水中脱出マジックと言われていたフーディニの「ミルク缶からの脱出」を演じた1908年の70年以上も前に、すでに日本の手品師が水中脱出マジックを演じていたということなのである。
これが一体何を表すのか?
当時の日本のマジック界は世界の最先端を走っていたということである。
これはスゴイ大発見である。
私も日本のマジシャンのハシクレとしても誇りに思うことである。
このニュースが世界のマジック界に伝わってほしいものだ。
この春にオープンするルスツリゾートの追い風になってくれたらありがたいことだ。